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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活二年目
104/110

キャンプ③

 




 休憩がてら、水辺特有の薬草をのんびりと採取する。

 特に珍しい種類ではないが、売ればそれなりの価格だ。


「網があるから掬ってみる?」


 ソフォス講師の誘いに乗り、網で掬うと鋭い歯を持つ魚が取れた。びちびちしている。


「歯と背びれに気を付けて。この魚がね、けっこう珍しくて美味しいんだよね」


 美味しい魚か。期待。でも淡水魚だよね。臭みはどうだろう。


「夕食は魚のスープが食べたいね」


 ……まさかそのためにここに来た?


「あ、君の喜びそうなものもちゃんとあるよ。池の中央に木があるだろう? あの木はいい木材になるんだ。魔動車向けの」

「それはうれしいですけど……。え? 引っこ抜くんですか?」

「引っこ抜かないでね。君は本当に変なのこと言うよね。実がなってるんだから、実を取って来て植えればいいんだよ」

「育つまで木材にならないじゃないですか」

「すぐ育つから大丈夫だよ。君は来年植物学を取った方がいいんじゃないかな?」

「…………」

「実、どうやって採る?」


 それまで黙って聞いていたメリルが、心配そうに覗きこんでくる。最近表情豊かになってきたよねぇ。


「走れば行ける距離、かな」

「え?」


 そんなに大きな池じゃないし。


「ちょっと行って来ます」


 軽く水の上を走って木に到着。そのまま駆け上がる。

 素材袋に実を五つほど採って入れる。


「ソフォス講師とメリルもいるー?」


 頷くのが見えたので、さらに十ほどもぎもぎ。まだまだ実は残っているので問題ないだろう。

 勢いをつけて木から跳ぶ。さすがに高さがあるから危ないかも。魔法で空間を作り足場にして、さらに跳ぶ。


「十点!」


 華麗に着地! とドヤ顔で二人をみたら何かぽかんとしてた。褒めてくれてもいいのよ?




 魚の処理をある程度して帰ろうということになり、捌いているとどこからともかく子猫が現れた。


「猫だ!」


 白い毛に灰色の縞模様。ホワイトタイガーみたいでかわいいな。

 まだ掌に乗りそうなくらい小さいのに、親が見当たらない。

 魚の匂いにつられて来たのかな。


「猫じゃなくてもンスターだけどね」

「そうでしたっけ?」


 モンスター学の勉強、頑張ってるつもりだったんだけどなぁ……。


「とりあえず持って帰りたいです」


 猫、飼いたかったんだよね。


「うーん、君なら手懐けられるかもね。アレの親に勝てばいいだけだし」

「それって……親を殺して子供を浚うってことですか?」


 それ手懐けてなくない? 恨まれると思うんだけど。


「殺すわけじゃないよ。パラサイトキャットは子供がある程度大きくなったら親よりも強いモンスターに預けられるんだ。より強くなるためにね」

「へぇ、モンスター同士って仲良いんですね」

「いや良くないよ。預けても殺されることが多いし」

「えぇー……」

「だから個体数が少ないんだよね」


 変わった習性を持ってるなぁ。殺される危険を冒すくらいなら自分で育てた方がいいと思うんだけど。


「君なら充分親よりも強いだろうし、この子に殺されることもないだろうし」

「え?」

「大人になったら育ての親を殺して独り立ちするんだよね。だからパラサイト」

「何それこわっ!」

「逆に育ての親が殺せないほど強いと認識していれば一生の忠誠を誓うともいわれてるけど」

「危険な賭けすぎません? ソレ」


 しかもその忠誠を受けた前例がドラゴンクラスって死亡フラグじゃん。って死なないじゃん。


「そんな危険なモンスターがいるのに騎士団は放置ですか?」

「うーん、逃げ足が早くて追いつけないんだと思うよ。元々好戦的ではないから危険はないし」


 その習性なのに好戦的じゃないって結構な矛盾に感じるんだけど。


「ともあれまずは餌付けですね!」


 捌きたての魚を手の平に乗せて差し出してみる。

 恐る恐るといった具合に近づいてくる。

 よしよし来い来い。

 匂いを嗅いで確認した後、はぐはぐと食べ始めた。

 魚を取って逃げない当たり、警戒心足りてないぞ。元飼い猫か?

 あぁ、かわいい。抱っこしたい。肉球は固いだろうけど触りたい。

 食べ終わったのを見計らい、一気に捕獲。驚いた子猫が逃げようとするがそうはさせん。

 いじめじゃありません、愛でてるんです。

 あまりにもしつこい私に諦めたのか、おとなしく撫でられるようになった。ごろごろ言ってる。かわいい。


「猫……かわいそう……」

「猫って触られるの嫌がるんだけどね……嫌がってたけど、うん……」


 何か責められてる気がするけど、気にしない。結果良ければ全てよし。


「かわいい……。親はまだですかね? 認められれば連れて帰っていいんですよね。あ、でもここに住んでいるわけじゃないから、離れ離れすぎません? 親も一緒に連れ帰れますかね?」

「親も一緒って言うのは聞いたことないね」


 子猫を愛でているとようやく親猫登場。サイズは普通の猫より少し大きいくらいだ。

 じっと見てくるので私もじっと見つめ返す。願いを込めて。

 おかあさん、お子さんを私に下さい。

 戦闘開始の合図がわからず、動きも見られないので待っていたら不意に子猫が腕の中から逃げ出した。

 あぁっ! 私のオトリが!

 子猫は親猫にすり寄り、にゃあ、と一鳴きすると私の腕の中に戻って来た。やだかわいい。


「これは戦わずに認められたってことですかね? 親猫さんも一緒にどう?」


 言葉を理解したのかどうかわからないが、親猫がゆっくりと私の前に来た。そのまま伏せて一鳴き。

 うん、わからん。

 でも連れて帰って良さそうな感じよね?

 猫二匹、念願のペットゲットだ!


「コテージに連れて行くのはさすがに無理だと思うよ」


 あ、確かに。騎士団に取られても困るし、こっそり隠して連れて帰らないと。

 

「素材袋に生物は入れられないからね。一日隠せたとしても馬車に乗せるとばれるんじゃないかな?」

「普通の袋で隠しましょう」


 おとなしくしててくれれば何とかなるでしょ。

 税金関係は帰ってからオネエに相談するとして。

 その前にあと一日あることの方が問題なんだけどね。

 言葉が通じるかどうかはともかく、コテージ近くにあと一日隠れているように言い聞かせてみた。ちゃんと餌と水はたくさん置いておく。


 魚を持って夕食の準備に加わった。メリルもついてきたけど、最終的には手伝うことを容認され、私とメリルで魚料理を担当することになった。

 ソフォス講師のリクエスト通り、魚のスープだ。メリルが魚を処理したいと言い出したので、魚は任せ、私は野菜を切る。具材に火が通ったら味を整えて、臭み取りの香草をたっぷりいれたスープの出来上がり。

 ソフォス講師に差し入れして、残りは皆で食べる。


「美味しいお魚ですね」

「本当に。何というお魚ですの?」


 何だっけ。聞くの忘れたな。


「ピラー」


 メリルが呟くと皆のスプーン持つ手が止まった。


「ピラー」


 皆無言だったせいか、メリルがもう一度呟いた。

 いや聞こえてるよ。


「ここピラーとかいんのかよ!」

「ご存じ何ですか?」


 何で皆ピラー知ってるの? 生物学もモンスター学も取ってるのに聞いた覚えないんだけど。


「むしろ何で知らねえんだよ……。肉食だし背びれに毒あるし小さいけど凶暴で死者が出ることもあるくらいなんだぞ」

「むしろそれをさらっと取らせたソフォス講師にびっくりするわ」


 何考えてんだあの講師。

 いや毒物効かないけどさ。でもそれソフォス講師知らないじゃん。毒があるとすら言ってなかったんだけど。


「解毒薬持ってた」


 そういう問題なのだろうか。




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