キャンプの説明
パーティのランクアップ試験が四日以上掛かるということで、先に私のDランク試験を受けることになった。
試験自体は前回と同じで、多少相手が強くなったとはいえ、要領は同じだ。魔法は使わず力押しで、無事ランクアップ。ちょっと拍子抜け。次を受けるにはにはレベルが足りないし、レベル上げ頑張らないと。
試験だったのでスケッチとは別行動だったのだが、帰りにばったり会ってしまった。スケッチだけだったら別に良かったんだけど……。いや、スケッチは一人だ。私には一人しか見えない。
「あ、セリカさん」
「セリカ様!」
うん、スケッチの声しか聞こえない。聞こえないったら聞こえない。
「スケッチは今日草原行ったんだっけ? どうだった?」
「うーん……よく分からなかった。やっぱり長剣の得意な人に教えてもらって方がいい気がする」
「でも少し上がりました!」
「長剣の得意な人って心当たりある? 私はないんだよね」
コジローは刀だしなぁ。
「あの、セリカさん。一応紹介しておくね。ジョルジュとリカルド」
ちっ。
見なかったことにしようと思ってたのに。
私の華麗なるスルーを無視して紹介するとは。まぁ二人組がスケッチを突いて促してたんだけどさ。スケッチ相変わらず弱いな。まぁ苛められてるってわけじゃないならいいけど。
だがしかし、それとこれは話が別なのである。
「言っとくけど弟子も下僕も要らないし、仲良くする気もないわよ」
スケッチが苦笑いしてる。二人組も残念そうだ。
まぁでも名前くらいは覚えておこう。どっちも金髪だし区別が付き難い。
しいていうなら垂れ目のMっぽい方がジョルジュで、普通っぽい方がリカルドか。
「そこを何とか!」
「ならんわ!」
スケッチがジョルジュを抑えてる間に素早く離脱。後ろから離せアルス!という声が聞こえる。離すなスケッチ。頑張れスケッチ。
週明けの最初の時間、キャンプの説明が行われた。
ゲーム内にもあった設定だが、このキャンプでは四位から六位の貴族が一位から三位までの貴族につき、お供の代わりをすることがある。これは実際下位や中位の貴族が上位の貴族に仕えることが多いからだろう。ただ上位と下位の割合や性別、お互いの希望などが釣り合わず、全員がそういう風にペアになるわけではない。
ペア、または単身数人でグループを作る。人数は好き好きだが、少なすぎると講師がちょうどいい人数になるように組み合わせてくれるのだ。最終的に必ず六人以上になる。ゲームでは好感度の高い相手と同じグループになり、さらに好感度や友好度を上げることの出来る重要なイベントだった。
今はゲームじゃないし、そもそも主人公じゃないのでその辺りは関係ないが、私は四位なので上位の貴族につく可能性があるが、正直お供の代わりをしようとは考えていない。実質就職のための布石なわけで、お供希望じゃないし。だから将来上位貴族に仕えたいと思っている次男以下の中位下位貴族は必死だ。
キャンプの栞も用意されていて、一人一冊ずつ配られた。
ぺらぺらと捲ってみるとかなり詳細な予定が組まれている。さすがに座席表はないが、かなりの数の馬車で一日半かけて現地に行くようだ。王都所有のキャンプ場で、主に戦闘訓練に使われている施設は、騎士団や王都にある他の学園も共有して使われている。モンスターの数が多すぎにならないように頻繁に狩りが行われているようだ。当日は騎士団も派遣されて見回りが実施されることになっている。この辺りは保護者を安心させるために書かれているのかもしれない。
ぼんやりと説明を聞いていると、隣の講義室からすごい勢いで飛び出す気配を感じた。魔法使ってブーストかけてこっちに向かってくるんだけど、大丈夫か? この短距離で必死すぎる。しかも一応廊下を走ることは禁止だ。
「セリカ!!」
「メリル?」
びっくりした。
息を切らして汗かいてまで走って来たの? 何かあった?
「キャンプ、わたしと一緒!!」
……あぁ、言いたいことはわかった。
神聖魔法でもスケッチにずるいって言ってたらしいしなぁ。クラスが違っても問題ないというので、メリルのお供代わりを引き受けることにした。
フェリシー様とドーリス様ががっかりしているのが見えた。微妙。元々私はお供代わりする気なかったんだけどなぁ。
「せめて、一緒のグループになりたいです……」
駄目ですか? と上目使いにおねだりされて駄目なんて言えるわけない。断るつもりはなかったけどさ。
「わたくしもご一緒させていただきますわ!」
「もちろん俺もだ。フェリシーに変なことされたら困るしな」
変なことってどんなことだよ。私がフェリシー様に何かするわけないじゃん! まぁ私がいてもいなくてもこの二人は同じグループになってただろうけどね。
結局私はメリル、フェリシー様、ドーリス嬢、オマケ二人という濃いメンバーになった。講師の判断で人数が増える可能性はあるが、この組み合わせ自体はそのままだ。
メリルが変なこと言わないでくれるといいなぁ。ちょっと不安。




