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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
ハンターになるまで
10/110





「寒い」


 寒くて目が覚めた。布団を体に巻き付けながら起き上がる。そのままずるずると窓に近寄ると、雪景色が見えた。


「え、雪? マジ? 早くない?」


 今日は十二ノ月の一日。そのまんま十二月の一日だ。年に数回しか雪の降らない地域に住んでいたせいか、ここもそうだと思い込んでいた。


「結構寒い地域なのかな」


 ゲームのパラメータ画面の背景は、冬は雪景色だったっけ。気候について取説に載ってたかな。見逃してるかも。あとで読み返してみよう。つい昨日まで全然寒くなかったから油断していた。朝食のときにでも、暖房器具とか防寒着とかあるのかどうか聞いてみよう。さすがにフリースはないよね……。それよりもまず、やらねばならぬことがある。


「新雪は! 踏むために! ある!」


 雪なんて珍しいからテンション上がる。超上がる。超踏むし。踏み荒らすし。

 せいぜい五cmか十cmかって程度しか積もってないけど、充分楽しい。庭園中走り回って足跡をつけた。フフフこれで庭園は私のモノ。

 メイドさんに叱られながら着替えて、朝食をとり、隠身を使ってこっそり裏庭の新雪を踏み荒らした。飽きた。


「セリカったらすっかりお転婆になっちゃって」


 うふふ、と可愛らしく笑うアンジュお姉様と相変わらず無表情待機のセバスチャン。


「でもセリカ、雪の中を毎日走り回るつもり? 風邪を引いては大変よ。パーティーまではやめて頂戴ね?」

「はい、お姉様」


 確かに風邪を引くと厄介だ。もう飽きたし、やらないけど。

 しかし毎日ということはやっぱり寒い地域なのか。そんなに雪が降るのなら、カマクラとか作れるかもしれない。もちろん作るならパーティーが終わった一ノ月かニノ月にする。


「クリスマスまで一ヶ月をきってしまったけど、大丈夫そうね。すごく上手になったわ」

「お姉様のお陰ですね」


 練習を始めて約二ヶ月。これだけ時間を割いておいて全然ですってなったら目も当てられない。ダンスはいまや200越えでトップパラメータだし、ステップも100を越えている。ちなみにダッシュとジャンプは200近いので、再来月辺りには軽業を取得出来るんじゃないかと思う。楽しみすぎる。実は軽業が一番欲しいスキルだといっても過言ではないのだ。他のスキルも大分上がってきたけど、割いてる時間も違うし、ダンスには及ばない。


「これで安心して嫁げるわ」

「え?」

「やっぱり知らなかったのね。私、もうすぐ南方に行くの。ジョフロア・キャナール様と結婚するのよ」

「それは……おめでとうございます」


 で、いいんだよね? たぶん政略結婚だと思うんだけど。


「ふふ、ありがとう。私、寒いの嫌いだからちょうど良かったわ」


 軽っ! そんなんでいいの?


「そういえばダーヴィトがどこに行ったか知ってる?」

「北方に行くと窺いましたが」

「そう、やっぱり雪うさぎ狩りかしら」

「雪うさぎ狩り、ですか?」

「えぇ、たぶん。毛がね、すごくふわふわしてて気持ちがいいの。私は手袋を持っているわ」


 ラビットファーよね、たぶん。

 セリカなら総毛皮のコートとかかっこいいと思う。お姉様は可愛い系だからポンポンのついたポンチョ風コートかな。帽子、マフラー、手袋をお揃いで作っても温かいだろうし、かわいいだろうな。

 ダンスの特訓は、お姉様が家を出る一週間前、つまりあと一週間で終わりだそうだ。特訓が終わって他のことに時間を費やせるのは嬉しい。だけどお姉様がいなくなるのは寂しい。この家で私が一番接しているのはアンジュお姉様なのだ。同じだけセバスチャンもいるのだけど、セバスチャンは話さないからなぁ。


 昼食の後、サオンにマッサージしてもらう。ラベンダーのアロマオイルを使ってもらい、すごくリラックス出来る。マッサージって何でこんなに気持ち良いのかな。


「ふおぉぉぉ気持ちいぃぃぃ」


 あー極楽極楽。

 マッサージのスキル、あったら便利そうだけど自分には使えないもんね。残念。


「セリカお嬢様、すごく張ってるんですが……あまり体を酷使すると……」

「そうなんだけどねー……」


 ダンス、ダッシュ、ステップ、ジャンプ、たまにこっそりリオンお兄様の訓練と中々の運動量だ。学生時代と比べればまだまだだと思うんだけど、そもそもこの体じゃなかったし。


「はい、おわりました」

「ありがとー! すっごく気持ち良かった! んじゃ、お茶にしましょうか」


 いそいそと起き上がり、お茶の準備を始める。サオンのときしか淹れられないから中々上がらないんだよね。入学前にせめて100には到達したい!


「さ、入ったよ。今日はミルクティにしてみたの。今日のお菓子はダックワーズみたいね」

「わぁい!」


 いやー、順応してるなぁ。最初の頃は一緒のテーブルとか無理ですとかお茶を淹れてもらうだなんて、とか大変だったのに、今じゃ普通にお菓子に喜んでるもんね。マジハンの世界にお菓子は当たり前に存在するけど、あまり安いものではないようだ。子供のお小遣いで買えるようなものではないらしい。サオンにはメイドの給料が出ているけど、仕送りもあるしお菓子なんて高級品はとてもとても、だそうだ。


「毎日サオンとお茶出来れば良いのに」


 パラメータも上がるし、お菓子を頬張るサオンがかわいいし、幸せそうだし、楽しいし、癒されるし。


「さすがに、それは……」

「でもお母様やアンジュお姉様には専属のメイドがいるのでしょう? 私にもサオンをつけてもらえばいいじゃない?」


 そうなのだ。お母様とアンジュお姉様には専属のメイドがいる。お父様やデューお兄様にも専属の……男版メイドみたいなのがいる。執事? 従者? よくわからないけどそんなのが。

 

「セリカお嬢様も結婚が近付けば専属のメイドをつけられるでしょうけど、あれはそれなりに身分がないとなれないんですよ」

「身分?」

「はい。メイドにも何ていうか、位が高い人と低い人があって。専属は高い人なんです。貴族とか。わたしは平民で、しかも獣人ですから」

「獣人って何かハンデになるの?」


 あ、これって本人に聞いちゃ駄目だったかも。


「えっとですね、地域によりますけど……ここは中央寄りなので、そうでもないです。もっと端の方へ行けば完全に分かれて暮らしてたりしますよ」


 サオンは気にした風もなく、説明してくれた。

 



 最近は夕食後の時間を、魔法の訓練に当てている。だんだん読む本が無くなってきて、パラメータが上がり難くなって来たせいだ。これがまた面倒なんだよね。どうせならモンスターと戦ってパラメータ上げていきたいのに! くっそー。自由が恋しい。

 

「《我が指先に火を灯せ》」


 指先に小さく揺らめく種火を、キャンドルに移す。


「《風よ吹け》」


 キャンドルの火が風で消えた。

 

「もう魔力切れそうだし」


 キャンドルに火を点け、風で消す、という動作をちまちまと繰り返して、魔力が切れそうになったら《祈り》を使うという、地味な訓練だ。

 火魔法も風魔法もパラメータは40を越えているので、もう少し大きな魔法が使える。が、さすがに室内じゃあ……ということで、仕方なくこのパラメータ10で覚える初歩の初歩で頑張っているのだ。

 別パターンで花瓶に水を溜める、砂を溜める、窓の外の雪を少し止める、というのもある。いちいちスキルの設定をし直さないといけないので、パターンを分けているのだ。火と水を一緒に設定すると、片方を使ったときに片方が下降する場合がある。シュミレーションゲームはそういうところが面倒なんだよね。ロープレだと上昇するだけで、下降しないのにさ。だからこそこの自由設定は反則技チートなんだけど。面倒だけどきちん設定し変えれば、普通の人よりも成長速度が格段に速い。


「あーあ。お兄様、早く帰って来ないかなぁ」


 狩りに行きたい! モンスターに魔法撃ちたい! でも正直攻撃魔法より補助魔法で肉弾戦したい! お兄様早く帰って来い!

 




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