超次元自動販売機
時は××××年、世界は自動販売機で溢れていた。
道、公園、学校の教室の中、墓、プールの中、井戸の中、トイレの中、海の中、山の中、山中さんちの屋根の上、どこもかしこも自販機だらけである。なので、景色はあまり美しいとは言えない。
何が売っているのかというと、それはもう本当に多種多様だ。ジュース、お菓子、おでん、果物、世界各国のあらゆる食べ物はもちろんのこと、生きとし生ける生物、消しゴムのカスから飛行機や豪華客船などの巨大な物まで、自動販売機で買える。もちろん金があればの話だが……。
今一番、流行っている自販機は生物パーツ自販機だ。死んだ人や生きている人の垢、爪、手、足、目玉、唇、鼻、耳、内臓、血液、あらゆる毛、全てが、単品から買える。
人間だけじゃない。ゴキブリの触覚や、一角獣の角、絶滅危惧種のパーツだって簡単に手に入る。
そして驚くべきことに、手に入るだけでなく装着もできるのだ。
私、一郎は今、とある自動販売機の前に立ち何を買おうか悩んでいる。
「どれにしようかなー、あぁー悩むな。よしこれに決めた」
私は最近発売されたばかりの河童の手に決めた。
2980円か安いな。私はマネーをインした。
河童のボタンを押すと、自動販売機が「装着しますか? <はい>、<いいえ>を選択して下さい」と言った。
私は、ためらうことなく<はい>のボタンを2連打プッシュした。
続けて「右手なら、<はい>を左手なら<いいえ>を押して下さい。」自販機が言った。
私は、左利きなので<いいえ>のボタンを押した。
すると、自動販売機から受け皿と、先が鋭利なナイフのような機械と河童の手が出てきた。
「動かないで下さい」自販機の無機質な声が流れた瞬間、私の左手は鋭利な物で切り落とされ、受け皿へと落ちた。しかし、痛みを感じる間もなくいつの間にか河童の手は私の左手に装着されていた。
私は、水掻きがついた緑色の自分の左手をまじまじと見つめ、歓喜の声を上げた。
「河童の手GETだぜ!」
私が喜んでいると自販機が、「今までの左手はお持ち帰りですか、それとも売却しますか」と問いかけてきたが私はせっかく18年も使ってきた左手だったので、お持ち帰りを選択した。選択すると、受け皿に載っていた左手は一旦自販機に戻り10秒ほどして、ビンに入ったホルマリン漬けの左手が出てきた。私はとても、満足した。
家への帰り道、狼の顔をしたみたことのない人がこっちへ歩いてきた。狼人間は私ににっこりと微笑んだ。誰だろう、私は遠距離個人特定装置を使い誰かを調べてみることにした。その装置を使えばどこの誰だか顔を隠していてもわかるのだ。その結果、クラスの英語のキース先生だとわかった。
「Hello、キース先生。誰かと思いましたよ」
「Oh! 太郎。Sorry、驚かせてごめんナサイ。こないだ旅行で行った狼の里でこの狼男の頭を見つけたんです。地域限定商品なんですよ」
「地域限定商品ですか、羨ましいです」
「太郎さんも河童の手を買ったんですか」
「Yes、愛 do」
「よっぽど嬉しかったんですね、言葉に愛がこもっています。じゃあ シーユー トゥモロー」
キース先生が、去って行く後ろ姿を私は羨望の眼差しで眺めた。
私は、それからというもの休みの日は地域限定商品を求めて全国を駆け巡った。
右手は人間国宝の手、金メダリストの両足、長寿家系の五臓六腑を装着することができた。金に糸目はつけなかった。
そうして全国を周り始めて1年が過ぎた頃、ある小さな村の宝物庫にある自販機で、1人の人間の頭が売られているのを見つけた。
村のおばあさんに聞いてみると、たいそう、すごい人間の頭だというようなことを言われたので、私は高い金を払い装着した。これで、みんなに自慢ができる。私は心の中でガッツポーズを上げた。
装着しても、特に日常に変化は訪れなかった。自分の周りの人が、バタバタ死んでいく以外は……。ん? 死ぬ? もしかして。ガッデム!
私は頭を買った村へと急いで向かった。
村に着くや否や、おばあさんに問いただした。「この頭、まさか殺人犯の頭じゃないですよね」
「よーわかったのう。すごい恐ろしい犯罪者の頭じゃ、気に入ったか?」
私こと、一郎 太郎はその言葉を聞いて、その場でがっくりとうなだれた。
「オーマイガッ」




