ちっぽけな歩み
大層な英雄譚や、誰もが羨む成功譚を期待してこの本を開いたのなら、今すぐ閉じたほうがいい。ここに記されているのは、胸を張れるような偉業でもなければ、美しく飾られた思い出でもないからだ。
歩いてきた道を振り返れば、そこに転がっているのは情けない足跡と、どうしようもない徒労感ばかり。けれど、どれほど惨めで笑い話にするしかなかった日々の裏にも、確かに捨てきれなかった情熱や、言葉にできなかった切なさがへばりついている。
これは、自分の歩みをコメディで誤魔化しながらしか前へ進めなかった、ある人間の一粒の飴玉のような記録だ。薄味で、少し苦く、けれどどうしても愛おしい——そんな泥臭い軌跡の始まりを、ここに残しておこうと思う。
歩いた道程を振り返ってみたら、ちっぽけだった。ちっぽけなのはまだいいが、碌でもなかったら後悔のしようもない。
でも待て。果たして本当に碌でもなかったか?よく考えよ。
わたしの残した軌跡に何が残り、何がきえていったか。
ちっぽけで碌でもない軌跡をたどった先に残っていたのは、誇らしい偉業などではなく、ポケットの底でカピカピに固まった1個の飴玉と、あの時見逃したアニメの録画予約失敗というどうしようもない徒労感だけだった。
「せめて金貨の一枚でも落としておけよ」と自分の背中にツッコミを入れながら、その飴玉のホコリを払って口に放り込む。
薄味で、少しだけ苦い。
こんな下らない足跡のために泣いてやる義理も価値もないと笑い飛ばしたいのに、舌先に広がる安っぽい甘さのせいで、なぜかボロボロと涙がこぼれて止まらなかった。
ほら、こんな風にコメディタッチにすることで誤魔化そうとする方向性が卑屈に見えて、安っぽい
読者の皆様、ここまで主人公のぶざまで愛おしい歩みを見守ってくださり、本当にありがとうございました。
偉業も金貨もないけれど、ポケットの底に残った苦くて甘い飴玉のように、どこか捨てきれない愛着を感じていただけたならこれ以上の幸運はありません。笑い飛ばしながらも捨てきれないその泥臭い感情こそが、この物語の主人公であり、わたし自身のいとおしい軌跡です。
またどこかの物語で、少しだけ不器用な足跡とともにお会いできますように。




