添い寝屋柴犬とこたつでうとうとするお婆ちゃん
『電車が遅れているみたい。だから、ちょっと到着するのに遅くなるね』
『おばあちゃーん!』
「大丈夫? 迎えに行こうか?」
『大丈夫だって、僕らで行けるよ! あ!』
『あのね、電車に乗るよー。ちゃんと一人で行けるよ!』
『もう、俺が話しているのにスマホを取るなよ! だから迎えに来なくて大丈夫だから、待っていて』
若干不安があったけど、孫たちの電話を切った。
初めて孫の兄弟二人だけで私の家に来るって言っていたけど、やっぱり心配だから迎えに行きたい。でも孫の兄はもう中学生だし、弟も小学四年生でお節介を焼いたら嫌がると思うな。
なんだかモヤモヤした気持ちで、こたつの中に入った。
テレビをつけると、もうすぐお正月と言う文字が見えて華やかだ。
年末から家族が来るけど、今日は先に孫の兄弟が来て、仕事が終わって明日長男夫婦と独身の次男が帰ってくるのだ。
家の掃除やお正月の準備も終わって、後は二人を待つだけだ。
「はあ、大丈夫かしら……。あら?」
こたつのテーブルに一枚のチケットを見つけた。新聞の広告に挟まっていたチケットと思ってみると、可愛らしい柴犬の絵と【添い寝屋】と書かれていた。
「可愛らしい柴犬の絵ね。うちのコシバみたい」
「お呼びですか?」
ヒョコッとこたつの中から何かが出てきた。見ると我が家で飼っている茶色の柴犬、コシバだった。
「え? コシバ? あなた、喋れるの?」
「僕はコシバじゃないです。【添い寝屋】です」
「【添い寝屋】?」
「はい! そうです!」
ヘラッと笑って元気よく言う柴犬。うちのコシバにそっくり。
「今日はお家の掃除やお正月の準備で大変だったでしょう。ちょっと一休みしてほしいから、知り合いの添い寝屋の猫に極意を教えてもらったんですよ」
「添い寝の極意ってあるの?」
「ずっと寝るまで寄り添ってあげる事です」
添い寝屋さんの温かい毛とこたつの暖かさで、ちょっとウトウトしてきた。でも寝ちゃうとマズイ。
「寝ちゃうとまずいのよ、これから孫二人がやってくる。もしかしたら、何かトラブルが起きたら……」
「それだったら、大丈夫ですよ。スマホが鳴ったり、二人が来たら僕が起こしてあげますから。僕は起こすのは得意ですからね」
得意げに言うコシバに「そうよね」と笑う。いつも私が起きる前にコシバはわんわんと吠えて起こすのだ。
「それに二人は大丈夫ですよ。ソウ君とアキ君だって二人でお婆ちゃんの実家に行ったじゃないですか」
「ああ、そうよね。うちの息子たちも兄弟二人で私の実家に行ったわね……。あれ?」
「どうしました?」
「それってコシバが来る前の話しでしょう? なんでコシバが知っているの?」
「僕はコシバじゃないですよ。添い寝屋です」
そう言って澄ました顔して「さあ、一休み、一休み」と添い寝屋さんは言った。
まあ、いいか。そう思って、目を閉じた。
*
わん、わん、わん!
コシバの鳴き声で私は目覚めた。
「あら、いけない。こたつでうたたねしちゃった」
そばにいたコシバは玄関の方で鳴いている。
誰かが来たのを察知して吠えているのだ。私も玄関へ行き、コシバを撫でた。
「コシバ、あなた、添い寝屋さんを始めたの?」
そう尋ねるとコシバは不思議そうな顔で私を見た。そんな訳ないか。コシバは暑がりだから、こたつにはあまり入らないのだ。
あの添い寝屋さんは当然、夢の中って事だろう。
ピーンポーン!
「おばあちゃーん! 来たよー!」
「おばあちゃん!」
チャイムが鳴り、孫二人の元気な声が聞こえたので私は玄関のドアを開けた。