忘れてた設定
無事に雨が降った事で最大の目的は達成したので、チルチルとミチルに乗って一度グレイン邸に戻る事にした。
脳内パニックからようやく復活した私もまたレオと近い距離でチルチルに乗らなきゃいけない。
「バネッサご褒美楽しみにしてるから」
空の上で、サラッと言われた言葉にまたも動揺するが
たかがキスじゃない…こっちは二児の母親よ。
アメリカでは挨拶じゃない…余裕余裕。
と言い聞かせてた。
てかレオ、またキャラ変したの?
こんなセリフをサラッと言えるほど甘い男だったっけ?
と、自分が生み出したはずのレオナルドを思い返す。
ああ、確かに甘かったわ…相手が聖女だったらだけど。
きっと忘れてる設定もいっぱいあるんだろうな。
後でゲンに確認してみよう。
と、現実逃避するのだった。
グレイン邸に到着するとマザールが迎えに出て来た。
エリーゼが居ない所で、レオの光魔法で雨を降らせる計画は伝えてあったのだ。
膝を突いて最敬礼で私達を迎えるマザール。
とりあえず目の前の一番の問題が片付いたのだから良かったのだろう。
「レオナルド陛下、バネッサ王妃、実はエリーゼの姿が見当たりません…」
申し訳なさそうに言うマザール。
朝食のスープには私が指摘した通り媚薬が混入していた事。
以前、エリーゼがマザールの奥様に毒薬を盛ろうとしていた事を聞いた。
はぁ?なんで毒薬?
「来た時から怪しかったので侍女に探りを入れさせてました」
ある日どこかで薬の袋を買って帰り、侍女に奥様の食事はどれかと聞いていたから危険を感じて実家に戻したのだとか…
「多分、この媚薬もそこで手に入れた物かと思われます」
申し訳御座いませんと土下座する勢い。
まあ、自分の邸で国王に薬が盛られるなんて下手したら首が飛ぶわね。
雨が降った事で色々な各所と連絡を取っている内にエリーゼの姿が見えなくなったらしい。
これは…
確実に何か企んでる。
どうするつもりなのかしら…
考え込んでいるとゲンが私にしか聞こえないくらいの小声で言った。
「あの酒屋に行ったんじゃないの?」
酒屋?
ああー!!
確かに!あったわバネッサがレオに近づく聖女を害そうとして毒薬を買いに行った所が。
見た目はただの酒屋だけど、お金を払えば何でも用意してくれる男が居た!
忘れてるってそんな設定!
そこに慌てた様子でグレイン家の執事が走ってくるのが見えた。
「マザール様!大変で御座いますー!」
只事ではない雰囲気に私もレオも目を向ける。
「疫病が発生いたしましたー」
は?疫病?
地震も動物の死骸も無いのに?
話を詳しく聞くと街の中心部で領民が次々と倒れているのだとか。
なんだそりゃ?
そんな疫病あるか?
そこでふとエリーゼの顔が浮かぶ。
「まさか…」
そう呟いたマザールも同じ事を考えたのだろう。
だが私もマザールも恵里奈をよく知ってるからこそ確信している。
エリーゼがやったんだ。
聖女の為のイベントを領民の命を危険にさらしてでも、無理矢理起こしたのだろう。
とりあえず領民の安全と治療、それからエリーゼとパウロ…
そう…
大ボスのバネッサに陰ながら協力する、ダーゲン以外にもう一人この男がいたんだ。
酒屋のパウロの確保をしなければ!!




