聖女との出会い(マザールside)
俺の名前はマザール=グレイン
我がクラウド国の辺境伯であり、グレイン家当主だ。
妻子がいて姉が前国王に嫁ぎ今は王太后として王宮にいる。
俺は日頃から妻子を大切にしている。
なぜなら信じられないかもしれないが前世の苦い記憶があるからだった。
地球の日本と言う国で生きてきた記憶。
はじめの結婚は1年も続かずに終わった。
原因は俺の浮気だが、俺は妻を愛していたしもうすぐ会える子供も楽しみにしていた。
正直、魔が差した。
その一言に尽きる。
しかしそれからの俺の人生は滅茶苦茶だった。
浮気相手とはそのまま別れたが、両親に外聞が悪いと慌てて次の嫁候補をあてがわれた。
その女性が好きだったわけじゃないけど両親に慰謝料を立て替えてもらった俺には拒否権は無かった。
数ヶ月の交際で婚約からスピード結婚をした。
そんな俺にも心待ちにしている事があった。
前妻が産んだ子供に会う事だった。
今はまだ会えないけど3歳くらいになったらもう一度話し合いが出来る。
そうなれば月に1回でもいい。
自分の子供に会いたいんだ…
しかし、その夢も儚く散る事になった。
現在の妻が子供の養育費を全く払っていなかったのだ。
もう私と結婚したんだからとか、前の奥さんと繋がってて欲しくないとか言い訳をしていたが、要は自分とは関係ない子供に金を払いたく無かったんだろう。
前妻が何か言ってくればすぐに分かったのに、支払われない事に何も申し立てて来なかった事で俺がその事実を知ったのは、離婚から3年経った時…
再度、子供との面会の要請をしようとした時だった。
当然、面会要請など通る訳もなく、俺は自分の子供と会うチャンスを失った。
噂では男の子だと聞いていた。
名前は元太とつけたのだろうか?
2人で男の子だったらと考えた名前だった。
それにしても、俺が結婚してから養育費が払われなくなったなら、1年くらいしか支払われてないはず…
生活は大丈夫なのだろうか?
あかりは子供を預けて働いているのだろうか?
今更ながらもう会う事のできない2人を案じた。
それ以降、元々よそよそしかった俺達夫婦は一層距離ができ、離婚まではしなかったが生涯子供には恵まれなかった。
そんな苦い経験から今世の妻子は大切にしたいと思っていた。
貴族の良くある政略結婚ではあったが、今度は間違えないと強く誓っている。
今、うちの領地は雨が降らない日が続き水不足が懸念されている。
どうしたものかと頭を抱えていた時、領民が私に話があると言って、門の所で座り込んでいると執事が伝えに来た。
部屋に篭っていても良い案は浮かばないので気分転換に門の外にいる領民に会いに行った。
その事が大きく事態を動かす事になる。
意外にも若い女性だった。
頭からスカーフをかぶり、普通の町娘といった感じだった。
が、顔を見た瞬間俺は思わず息を飲んだ。
それは町娘も同じだった様で
「まさか…ま、まさるん??」
俺を(まさるん)などと呼ぶ女は過去コイツだけだった。
「恵里奈…なのか?」
衝撃の再会だった。
まさか今世でもこの女と出会うとは思わなかった。
しかし、どうしても話したい事があると言う恵里奈を応接間に通した。
「まさるん、大変よ!このままだとこの領地は壊滅するわ!」
何を言っているのかさっぱりわからなかった。
しかし、今はマザール=グレインだと正すと、
「あ、私はエリーゼよ!聖女なのっ」
と、言って頭のスカーフを取った。
すると恵里奈、いやエリーゼは今世では見た事の無いピンク色の髪をしていたのだった。
「これはね、おねーちゃんの書いた小説の世界なのよ!!」
全く以て突拍子もない話だったが、あかりの事を出されて心が動いた。
それからエリーゼに小説の内容を詳しく聞いた俺は半信半疑ながらエリーゼをこの邸に置く事を許した。
もし本当の事だったとしたら聖女であるエリーゼの力が必要なのだから…




