第3の災害
我が国、防衛の生命線であるグレイン辺境領。
ここはあのレパール王太后様のご実家でもある。
この地に色々な異変が起こり次の災害の地となるのだ。
まず始めは、長期に渡り雨が降らなくなる。
深刻な水不足となり、生活用水は王都や他領から調達してやりくりしていたが土地は乾き、家畜は痩せて、農作物は枯れてゆく…
グレイン領は国防も担っているので領地を出る事も出来ず、領民は厳しい生活が続いていた。
次に大きな地震が起こる。
日々、色々な事案を想定していたグレイン辺境伯はこの地震にも上手く対応して多少の怪我はあっても領民の大きな被害は無かった。
しかし人以外はそうもいかなかった。
ストレスを抱えた家畜はパニックを起こし、山に住む野生動物も草木が枯れて餌が無くなった事も重なり人家がある街に雪崩れ込んでくるのだった。
こうなると、領民を守る為には暴走する動物を処分するしか無くなった。
これによりたくさんの家畜や野生動物が殺され、その死骸が街に溢れた。
そうなると、1番最悪で1番恐れていた疫病が蔓延する。
領民は次々と病に罹り、グレイン辺境領は壊滅的危機に陥る。
他国がこのチャンスに辺境領に押し入らなかったのはこの疫病のおかげでもあったが、もう打つ手は無く辺境領を封鎖するしか無いかと思われた。
そこに隣の領地にいた聖女が救済に向かう。
同じ時、実家のグレイン辺境伯爵家の状態に心を痛め、体調を崩された母親のレパール王太后様の為に何とかしようと、周りの反対を押し切りレオナルド陛下も現地へと向かうのだった。
結果的に、聖女の癒しの祈りにより疫病に罹った領民は回復し、浄化の祈りにより疫病は終焉する。
更にレオナルド陛下が空に向かい光魔法を放つと、雷が鳴り雨が降り出す。
グレイン領にとって命の水となったのだ。
その頃のバネッサ?
当然、王太后様や不在のレオナルド陛下の代わりに公務をこなすわけもなく、通常通りダラダラとしながらドレスのカタログを見て
「レオナルド様に会いたいーー」
とか言っていたはず…
そんな理由で、この災害が起きた時に聖女がいないとなると疫病を防ぐ事が出来ない。
未知の病に薬剤も無いのだ。
死者も出る事だろう…
いつ起こるかもわからないし聖女もいるかわからない、原作とはかけ離れてしまっている今ゲンと2人で何とかするしか無いのだが…
「ねぇゲン、ピンク頭も見つからない?」
聖属性の聖女はこの国では見た事の無いピンク色の髪をしている。
だから存在するのであればかなり目立つはずなのだ。
「目撃情報は無いね」
ふーー
最悪、聖女として覚醒していなくてもと思ったのにな…
「辺境領はもう3ヶ月雨が降っていないそうだ、そろそろ生活用水の支援願いが来る頃かもな…」
そう…もう最初の異変は起きていた。
ただどれくらいで草木が枯れ果て、どれくらいで地震か来るのかわからない。
聖女も見つからない。
オスカーをとても可愛がってくれて、オスカーのお祖母様でもあるレパール王太后様の為にもなんとかしたいのだけど…
「なぁ母さん、今の内に雨が降ればどうなる?」
とゲンが言う。
今、雨が降れば…?
たとえ地震が起きたとしてもストレスの無い家畜はパニックを起こさない?
餌さえ確保出来るのなら野生動物も山から出て来ない?
殺さずに済むから疫病は発生しない?
のかしら…?
あら?
うちの息子はやっぱり天才だったわ!!




