お誕生日会を開こう
最近レオナルド陛下は昼食を王妃宮で一緒に摂られる。
オスカーの離乳食が進み、決まった時間に3食きちんと食べられる様になって陛下も時間を合わせやすくなったのだろう。
マリーヌが言うには、以前にやったピクニックの話が遅ればせながら陛下の耳に入ったらしい。
自分が呼ばれなかった事がたいそう気に入らなかったらしく、いつピクニックに行くとなってもついて来られる様にしているのではないかと私は少し疑っていた。
そんなにピクニックがしたいなら、またやれば良い
と、私が言えば…
「陛下はピクニック目的な訳じゃ無いと思うぞ…」
とゲンに言われた。
じゃあ一体なにが目的なのさ?
そして今日も王妃宮での昼食中にレオナルド陛下から突然の提案だった。
「来月のオスカーの誕生日にパーティーを開こう」
え?お誕生日会!!
それは子供がお友達を呼んでプレゼントを渡したり、ケーキを食べたり、人生ゲームをやったりするアレ?
料理やケーキお菓子のチョイス、用意する遊び等、母親の力量が試されるあの行事ですか?
うっ、腕が鳴るわね…
そんな事を考えていた私に陛下は続けて、
「お披露目以来、国民にも顔を見せてないしみなバネッサにも会いたいと思うんだ」
ん?…
「他の男達に美しいバネッサを見せるのは嫌なんだが、そうやって経済も回さなくてはならない、何よりバネッサとオスカーの予算が使いきれてない。少しはドレスや宝石でも買ってくれ…」
んん??…
どうやら私の思うお誕生日会と規模が随分と違う様だ。
それにしても無駄遣い大魔神だったバネッサがドレスを買ってくれと頼まれる日が来るとは…
でも正直、いらんのよねー
ドレスはその場のTPOもあるから作るのは仕方ないと思うけど、宝石って…
いらんなー…
何か欲しいもの?
うーーん…
そして迷いに迷った結果思い付いたのが、
家族写真!
だが残念ながらこの世界にカメラの様な物は無いらしい…
じゃあどうするのかって言うと、絵師さんに描いてもらうのが常識。
確かに、婚約の打診するための釣書が姿絵なのは異世界あるあるだけど、何度も言うが私はそんな細かい設定はしてないのよ!
カメラぐらいあっても良くない?
無いものは仕方ないのかも知れないけど、こっちはガラケーからのスマホ使いだったのよ、オスカーの可愛い瞬間を撮りたい時に撮れないのは辛いわ。
とりあえず嫌がられそうだけど、陛下に宝石はいらないから、飾れる様な家族の絵が欲しいとお願いしてみた。
ら?
意外や意外!陛下結構乗り気だよ?
「王都で一番の絵師を呼ぶ!!」
って何故か赤い顔して宣言しましたわ。
よっしゃー言質はとったぞっ!!
陛下はどうせなら誕生パーティーで披露したいからと早速絵師を呼んで、陛下と私とオスカーが3人ソファーに座っている絵を描いてもらった。
1歳のオスカーが絵のモデルなんて辛くないかしらと心配したが、流石は王都一番の腕前の絵師さんだけあって、はじめの構図さえ描けたら、細かい表情とかは普通にしてても描けるそうだ。
そうやって急ピッチで製作された家族の絵は無事に出来上がったのだけど…
ち、違う…ちょっと違うんだけどぉ。
私は卓上にちょこんと飾れる様なハガキサイズくらいのを想像してたのよ。
これは…
例えるなら新宿アルタ前の液晶ビジョンくらいのが来たんだけどぉ!
相当離れて見ないとわからんじゃん!
などと憤りながらも…
まぁこれだけのサイズなら相当予算も使っただろうし、しばらくは買い物しなくても大丈夫だろうと変な所で安心していた。
が…
誕生パーティーで予定通りアルタビジョンはお披露目された。
それを見た出席者は歓声を上げながら何故か欲しい欲しいと言い出した。
それに伴い、当初の私の希望だったハガキサイズの絵が貴族用、平民用と売り出される事になった。
発売した途端にもう人気アイドルのプロマイド並みに売れに売れて…
王族の資産がアルタビジョンの何十倍も増えたのだ。
そして私は今日もまた、何か欲しい物は?と聞かれるのだった。




