お食い初めがしたい!
オスカーが生まれてから100日。
そこで私には計画があった。
日本古来からの儀式「お食い初め」をやりたい!!
モーリスやマリーヌ達に話してはみたけど当然そんな異国どころか異世界である日本の儀式を知るはずも無く、イマイチ乗り気じゃないのよね~。
将来食べる物に困らない様にと願いながらオスカーに食べるフリをさせる儀式だと言うと…
「オスカー王子の将来は王様なんですから困りませんよ~」
と、マリーヌに笑われる始末。
そりゃそうなんだけどさーー!
諦めてロニーに相談した私は、あれやこれやと2人で考えて無事(異世界版お食い初め膳)を完成させたのだ!
とりあえず鯛が存在するのかも分からないので手に入った魚の姿焼き。
煮物は醤油が無いから無理なので根野菜のボイル。
汁物もコンソメスープで代用。
あと、赤飯…
まだ米がないのよーー。
仕方なくこの世界の主食のパンを代用した。
お箸も無いから祝い箸の代わりにフォークにリボンを付けて飾り、
歯固めの石が欲しくて庭師のダリルに頼んで良さげな石を持ってきて貰った。
当然、水魔法で綺麗にしたわよ!
改めて見ると、凄くごちゃ混ぜ…
でもオスカーの為に自分で用意出来た事に満足だった。
本来のお食い初めは食べさせる人や手順が決まっているけど、そもそもここは異世界だし、前世の時も誰もいないから元太と2人でやったから簡易的でも充分でしょ!
「この石はなんだ?」
ひいぃぃっーー!!
レオナルド陛下が突然現れた。
あの食事&気まずい初対面から何故かちょいちょいやって来る。
「それは(歯固めの石)といってオスカーの歯が石の様に丈夫に生えます様にと願う意味があるのです」
と、説明すると納得したのかふぅーんと唸って他の料理を見て回っている。
公務で色々な国に行くからなのか、あっさり受け入れて意外と頭が柔らかいのね…
てかっ!なんでいるのー?
「ん?王妃が何かしていると聞いたからな…」
何?なんなの?モーリスの報告書だけじゃ足りなくて自ら偵察に来たって事!?
「あ、それから本日付で乳母に任命した者も連れてきた」
と、言うレオナルド陛下の視線の先にはマリーヌに抱かれているオスカーを必死に構う…
「レパール様!!」
レパール王太后。
レオナルド陛下の実の母親でありバネッサの義母にあたるその方が何故に乳母?
「もう我慢出来なかったらしい…今日だけだから許してくれ…」
あー。
モーリスがオスカーに会いたがって根掘り葉掘り聞かれるって言ってたわ…
お披露目が終わるまで会えない規則のせいでずっとお預けだった王太后はとうとうオスカーに会える乳母となってやって来たのだった。
「え?バネッサちゃんなの?」
挨拶をと声を掛けると王太后は心底驚いている顔をした。
バネッサちゃんって…
あれ?私、レパール様にだって当然嫌われているはずなんだけどな?
諸説あるのだがお食い初めで子供に食べさせる役をするのは祖母の事が多い。
せっかくだからとレパール様にお願いした。
18歳でレオナルド陛下を産んで、陛下が今20歳…
38歳でおばあちゃんのレパール様は楽しそうにはしゃいでいた。
いざ始まれば、あんなにちょっと馬鹿にしていたモーリス、マリーヌをはじめ乳母sもなんとなく厳かな雰囲気に感動した様で涙ぐむ者もいる。
そりゃ生後0日から見てると成長にちょっとクルものがあるよねー。
儀式が終われば、多めに作っておいた料理を並べてみんなでお食事会。
本当はロニーやダリル、使用人の皆呼びたかったけど、オスカーがいるから諦めた。本当厄介な規則ねっ!!
でも今日はモーリスもマリーヌも乳母sも…
レパール様もレオナルド陛下も皆幸せそうに笑っているから良しとするか。
そして私の腕の中にはオスカーが幸せそうに眠っていた…




