バネッサvsレオナルドround2
私が席に着いた所で、食事がサーブされ始めた。
貴族の食事として一般的なのはフランスのコース料理の様に、順番に一品ずつサーブされるが、王族ともなると毒味係のチェックを通り次第提供されるのでどうしても冷めた料理になる。
でも私のいる王妃宮では関係ないけどねー。
「トマトとブロッコリーのサラダと海藻スープでございます」
いつも通り、サーブされた料理をロニーが説明してくれる。
「随分と温かいな…」
私が席に着いてからひと言も発しなかったレオナルド陛下がスープ皿に触れながら言った。
「温めてからすぐお出ししてますので…」
ロニーが答えると、陛下は驚いた顔をした。
まあ、そりゃわかるよ。
今まで仕方ないとは言えずっと冷めた料理食べて来たんだもんね。
「料理は温かい物は温かい内に、冷たい物は冷たい内に頂くのが一番美味しいのですわ…」
と、ロニーの言葉に補足する。
「陛下、ご安心下さいませ。私はどんな少量でも毒物が見えます。万が一口にしても取り除く事も容易い事です」
そう言って温かいスープをひと口。
うーーん美味しい!!
バッチリよロニー。
気持ちを伝えるためにロニーを見て微笑む。
それを見たロニーも安心した様に一礼して次の料理のために下がって行った。
「これは海の草か?」
スープに浮かぶ海藻を珍しそうに見ているレオナルド陛下。
海藻の事をこの世界では(海の草)と呼んでいるのは私も商人から聞いて知った。
「あら、よくご存知ですのね」
とは言え貴族には無縁の食材。
王様のレオナルドが知っていた事に驚いたのだ。
「ああ、船で隣国に行く事もあるからな…」
なるほど…
国王としての公務はしっかりやってるってモーリスも言ってたわねー。
と、さほど興味もないので曖昧に笑っておいた。
「しかし、食べられるのか?」
まあっ!またこの優秀食材を蔑ろにしましたわねっ!!
私は再び海藻の素晴らしさを語って聞かせながら
「それから髪の毛にも良いのですよ」
と、付け加える。
「僕は令嬢じゃないから髪の毛は別に気にしないよ」
苦笑いする陛下。
あまい…あまちゃんよ陛下。
「いいえ男性の方が大事なのです。陛下のお父様、前国王陛下はお年をとられてから髪の量が少なくなられたかと?」
陛下は私の言葉にハッとした顔をした。
「遺伝…親子は似るものでございますよ?陛下」
思い当たる事があったのか、それからは黙々と口に入れた。
その後も淡々と食事は続き、珍しい食材や調理法はロニーに聞いたりしながら、陛下も食事を楽しんでいる様子だった。
食後に陛下には紅茶、私には先日やっと出来上がったたんぽぽ茶が出された。
これは、ある日庭師のダリルがくれた花がたんぽぽだったのを見て私は歓喜した。
この世界にもあったのねー!!
たんぽぽの根を洗ってから干して、煎ったものが茶葉になる。
これはノンカフェインの上に母乳の出が良くなる魔法のお茶なのだ。
「珍しい茶だな?」
私のカップを見て陛下が言う。
確かにたんぽぽ茶は香り高いわけでもないし、正直高級品ばかり口にしてる陛下には合わないだろう。
「ずっと探してたお茶なんです」
そう返事してひと口飲んだ。
まぁ素人が作った物だし、そう美味しくはない。
でも母乳の為、天使の為。
他にも何か探してるのか?と聞かれたから見た目や特徴を教えながらお米を探していると話した。
「ん?ライスとか呼ばれてる物か?」
おおーっと!
そうですその通りです。
お米でもごはんでもライスでもOKです!
「たしか隣国で口にしたな?…」
欲しいのかと聞かれ、もうヘッドバンキングなみに頷く。
聞いておいてやると言うレオナルド陛下をバネッサははじめて男前ー!!と思った。




