バネッサvsレオナルドround1
解せない…
私は今、マリーヌをトップにした侍女軍団にこれでもかと磨かれている。
「ねぇ…たかが夕飯食べるだけよ?」
もう何度言ったか、同じセリフをまた言う。
「良いんです!痩せて綺麗になられたバネッサ様を私達がより綺麗にしたいだけなんです!!」
と、返ってくる返答も同じ。
最近はいつもすぐ胸が出せる様にAラインの簡素なドレスばかり着ていたから、ちゃんとしたドレスは久しぶりで戸惑う。
食事の改善と母乳育児、適度な魔法を続けている私は一層引き締まった身体になった。
もうダイナマイトワガママボディーの面影は無くなり、出産前の悪趣味なドレスはどれも着れず(着たくも無いけど)モーリスが何処からか持ってきた淡いスミレ色の上品なドレスを着せられた。
靴は白いローヒールの物を選んだ。
髪も丁寧にブラッシングされ、海藻効果もあってツヤツヤなので色々いじる事無く、ドレスと同じ色のカチューシャを着けるだけにした。
メイクはナチュラルに肌のトーンアップ程度で薄くピンクの紅を引いた。
香水はオスカーに良く無いから付けない。
あらっ!これがバネッサ?
すごく清楚なお嬢様風に仕上がってる。
「装飾品はどうされますか?」
マリーヌがバネッサの宝石箱を持って聞きに来たけど、抱っこした時にオスカーを傷付けてしまうかも知れないから何も着けないと断ったら何故かマリーヌは感動した様で、
「バネッサ様…立派になられて…」
と涙ぐむ。
ちょっと誰目線よっー大袈裟なのよっ!!
そんなこんなでマリーヌ軍団の大活躍の元、清楚なお嬢様風に仕上がった私はレオナルド陛下との夕食の場所へ足を運ぶのだった。
夕食はオスカーから離れたくないという私の希望で、私の部屋つまり王妃宮で食べる事になった。
普段レオナルド陛下は本邸のいわゆる王宮にいる。
私は別棟の王妃宮。
ちなみに前王妃様はまた別の棟の真珠宮に住まわれている。
別の建物にいるのだから、お互い会おうとしなければ会わずにいくらでも過ごせる。
それなのに以前のバネッサはレオナルド陛下に会いたくて年中王宮に押しかけては公務の邪魔だと兄、ギースに追い返されて結局会えないのだ。
まあ、レオナルド陛下も嫌っているバネッサに会いたくなかったのでしょう。
しかし今は、仲睦まじい夫婦という経験のないバネッサからすれば会えなくてもなんら問題は無く、逆に放っておいて欲しいくらいなのだ。
すっかり気持ちも足取りも重く歩いていると、気がつけばレオナルド陛下の待つ部屋の前に到着してしまった。
―― コンコンコンコン ――
控えめにノックをすると中から
「入れ…」
と声がした。
許可が出たら入って挨拶…と
「お待たせいたしました。お久しぶりでございます陛下…」
と、ここでカーテシーっと…
これは王宮内でのルールを全く知らなかった私にモーリスが1日で特訓した言わば一夜づけのマナー。
そしてレオナルド陛下の許可が出るまでこのまま…
このまま……
この…
ねぇって!許可はまだっ!?
「あ、ああすまない…席に座ってくれ…」
私の殺気を感じたのか、ようやく出た許可にプルプルする足を隠しながら席に腰を下ろした。
てか絶対わざとね。嫌がらせだわ!!
不倫男のクセにっ!!
と、まだしてもいない浮気をネタに内心怒りの炎をまたメラメラ燃やすのだった。




