空想~サークルの部室~
「なんて、そんなに笑っているんですか」
彼女が私に問いかけた。
私はつい現実を見ないで空想の浸ってしまうことが多い。今日は空中に浮かぶ魚を想像していた。とても目が八つありどこか気持ち悪い魚だったがこっちを見る姿に私は愛着を感じていた。
「聞いて、いるんですか」
彼女は少し声を低くして聞いた。これは彼女が怒る前兆だろう。まずい、答えないといけない。しかし、少しからかうのも楽しいかもしれないな。と思ったがまあ返答した。
「聞いているよ。今日はどうしたんだい。この時間は授業だと思っていたけど」
「急に、授業が休みになったんです。暇になったからサークルに来ました」
彼女は同じサークルの人だ。まあゼミが同じだから会話しているが、別に仲が良いわけではないが、彼女は沈黙が好きではないのか話しかけてくることが多い。
まあ、私も私が望んでいない沈黙は望んでいないから悪い気はしないが、会話したくない時も会話してくるから一長一短か。
「……前に書いた奴、読んでもらってもいいですか? ちょっと他の人の意見が聞きたくて」
彼女は良くBLを書いて、私に感想を聞いてくる。男にBLの感想を聞くのはどうかと思うが、真面目に聞いているみたいだし、まあ良いだろう。
「まず、BLのメイン読者層は女性で男の感想に合わせ過ぎない方がいい。そのうえで感想を聞いてくれ」
「濡れ場とかは何が女性の琴線に触れるから置いておくとして、キャラクターの感情とかがあまり分からないな。攻めと受けというだったな、それぞれのキャラクターの顔が見えてこない。もう少しそれぞれの個性を出したほうが良いじゃないか」
「……先輩、ありがとうございました」
彼女は、怒りを抑えながら感謝を言った。作品を否定されたのはムカつくが自分から感想を聞いたんだし怒るべきではないと思ったのだろう。
彼女のこういうところは好ましい。怒りっぽいが、それを抑えるだけの意志がある。いや、そもそも私からしてみればその怒りっぽさ自体に対しても悪くないと感じる。他人事だが、怒るだけのパワーがあるということが偶に眩しく感じるのだ。
だがまあ、目を閉じれば全ては無くなる。現実は全て崩れ去り、夢に堕ちていく。
ここに、全てがある。私はこの世界が夢のよう、他人事で生きているから色々なことを感じない。友人と喧嘩した時も、サークルで恋愛騒ぎが起きてメンバーが激減した時も……両親が車で轢かれて死んでしまったことも全てが夢のようだ。これは良くないことだと分かっているが、中々どうしてもこれが中々楽しい。
よくないかも知れないがこの世が夢だと思いながら適当に生きていこうと思った。




