学徒の一日
「う~ん」
資料を取りに図書館に行くと、私の生徒が唸っていた。
「どうしたんですか? 何か悩んでいるようですが」
はじめは警戒していたが声を掛けた人が私だと知ると警戒を解いた。
「新しい魔法が思いつかないないんです。もっと、魔法で色々な事をしたいのに」
「なるほど、ある程度魔法開発ができるようになった学生が一度は悩む問題ですね。私が言えることがあるとすれば魔法とは何かを考えればいいでしょう」
「魔法とは?」
「当然ですが、魔法とは魔力を使った様々な技術であり文化です。つまりは目的があって作られるものです。ただ新しいの作るのではなく、なんの為に作るのか、どのような問題を解決するのかそれを出発点に考えたほうが良いですよ」
「……ただ、珍しいではなくて、目的にあったものを作る…ですか。ありがとうございます。その視点でもう一度魔法を作ってみようと思います」
生徒は、納得したようなそうでないような曖昧な表情でうなずいた。まあ、こうしたら良いと言ってやれれば苦労はない。だが……
「簡単には解決しないでしょうがあなたの苦労はきっとためになりますよ。頑張ってくださいね」
ただ、困難に立ち向かう生徒にエールを送る。若者の苦労に対してこういう感情を抱くと年を取ったなあと思う。いやいや、私もまだ若い、人生常に成長。今の子を見習って私も立ち向かわければ。よし、今日は夜まで研究するか。




