盲信 ~異世界転生者~
「君たちは本当に彼を盲信しているね」
「信仰です。そして神をするのは当たり前でしょう。我が祖ですよ? くだらない動物であり、罪と血のみで生きていた私達を文明を持つ人間にしてくださったのですから」
「確かに、ね」
「昔、神はこの世界に降り立った頃の事を話してくれました。選別、生贄……人食い。文明社会で生きてきた神は地獄を何度も味わったと。しかし、生まれ変わるにつれ知恵と力を蓄え、とうとう文明を創造する神となったのです!」
「……彼は異世界の魂。この世界とは規格が合わない。だから、生まれ変わる時記憶を洗浄する事も叶わない……残酷なことだ」
「ええ、神は永遠に我らを祝福してくれます」
「しかし、彼は帰りたいと願っているのだろう?」
「……まだ、まだまだまだ神の祝福は足りていない! 確かに我らは文明を手に入れました。しかし、まだまだ野蛮で政治も未熟です。あの世界に届いていない」
「彼は元の世界の技術や歴史を文献に残しているはずだけど?」
「確かに技術や歴史は与えられてはいます。ですがそれだけでは足りない! 結局の所、野蛮な世界に生まれている私達は罪に濡れているのです! 認識と価値観が違う! だから、あの人の力が必要なのです!!」
「…………」
「だというのに魔女があの人を奪った! 許せない。あの人は我らのものです。絶対に渡さない!! ……だから、このような茶番にも付き合っているのです。ちゃんとやってくださいね」
「……わかっているさ」




