勇者
「ぶっちゃけ、こんな作戦を組むなんてリスクとリターンが合わなくて頭がおかしすぎる。しかし、なぜやったのか? 上の連中はリスクを知らずただ適当に『じゃあやってみようか』なんて感じでやろうと思ったのか? そこまでレベルは低くない。こんな事をしているのは勇者がいるからだ」
「……勇者」
「上の連中は勇者の問題を解決する能力を信じているもしくは盲信している。と俺は思っているが知っているでもいいかもしれない。それは身体能力が有るから魔力が多いからとかそういうレベルの問題解決能力じゃない。同じぐらいの戦闘力があっても勇者は別なんだ」
「どういう事だ」
「勇者は偶然にも奇跡的に解決する。それはそういう能力があるらしい。もうちょっと分かりやすく言えば『色々あったが解決するという魔法』を常に維持しているとな。だから、上はリスクを取れてしまっているのだ。まあ上の連中は自覚的に運用しているだけであって、他の奴らももうっすら無意識に勇者は違うと思っているがな。無意識なのでそこまで預けることは出来ないが。上はそれを自覚的にそれに運命を預けている。理由としてはより詳細な原理を知っているのか……もしくは魔王を倒すためかもしれないな」
「魔王を倒すため、だと?」
「もし、それが常に通用するなら魔族は絶滅している。その能力は魔王城では通用しないらしい。噂だがな。だからこそ、その力を使って途中の大陸でレベルアップをさせているのだとか。どんなに力の差があっても、そんな力があるならリスクを畏れず強い敵に戦わせることが出来る。当然強い敵と戦い勝つなら大幅に強くなれるが、その差に見合った確率で死亡する。その死闘の数々は普通ならば何万人の犠牲の果てに一人突破できるものだとして、しかし勇者ならば確実にその領域に至る。もちろん勇者にそれを教えると緊張感がなくなり強くなれないから勇者には秘密らしい」




