無意味な行動
「お前は包囲されている! 抵抗しても無駄だ。人質を離して投降しろ!」
外から声がする。僕はスナイパーから狙われないようにしながら声を上げる。
「……僕は政権の理不尽によって命を奪われかけた。だから、その反対活動としてこんな真似をしているけど……数十年で似たような人が何人死んだんだろう? 数百人かな。でも、この政権を維持するためのコストとしては数百人は帳尻があると皆は思うんじゃないかな? 僕が数十人殺しても十分の一が追加されるだけ。僕の行動でこの政権のコストは高すぎると証明するには足りない」
なぜか彼らは動揺しているようだ。僕の声が静かだったからだろうか?
「……戯言はよせ。時間が経つにつれて罪は重くなるぞ」
罪、ねえ。どうせ死刑だし、そもそも何もしなかったら世間に知られることすらされず殺されていた。
「政権が間違っていると証明するための行動だと思うには意味がないかなと思ってしまう。だって、別に何人殺しても政権のコストが高いという事に繋がらないから。変えるのはコストが大きいから一般人としてはこのままがいい。いくら被害者が痛みがあると叫んだところでね……はあ、無意味だなぁ」




