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認識需要
「……にしても『推し』という言葉は広がったな」
「本当に広がりましたね……私は言葉が広がっていく過程、結構好きなんですよ。言葉が生まれる前から対象の概念はあったと思いますが、言葉が発明されたことでその概念に対する認識がより精密になる気がします。皆もそう思っているからここまで『推し』という言葉が広がったのでは? やっぱり、自分の思いにより近い言葉を使いたいですからね」
「……需要か。認識需要。自らの感情、思いに対して的確な認識をしたいという気持ち……しかし、言葉が本質かというと違うな」
「どういうことですか?」
「君も言った通り、求めているのは認識の向上……人は皆、抱いた思いにふさわしい認識を探している。言葉はその補助輪にすぎない」




