全体合意
部屋の中、罵詈雑言が響く。一人に対して皆が言葉の凶器を浴びせていた。その言葉らから感じる怒りの深さは殺しに行くのが自然だろう。しかし、皆は鎖に縛れていた。
言葉の凶器を浴びせられている人物はただ黙っている。その姿に無意味さを感じ始めたのか、声が小さくなり消えた。その時初めて其の者は言葉を発した。この部屋の中唯一暴言を放たなかった人物に聞く。
「お前も同じ思いか?」
「……君は個人の判断で皆を丸ごと巻き込んだ。損失はこちらにも来る。もちろん、あのタイミングでやるのが敵に対していいと思ったんだろう。言うならば敵だけを見ていてそれに合わせた。こちらを見ていないならば非難されるのは普通だよ。もしやるなら、ちゃんと皆で話し合いをして行動しようとするべきだったね」
「そんなの待ってたら時間がいくらあっても足りない」
「そうだね。実際に全部合意するならば。でも、実際は皆と話し合いして全体として合意が取れたとしても全員が合意しているわけではない。自分はやりたくないのに全体がそうなったからそうなるって。全体と合意とは全員と合意じゃないから。だから、今まで組織はとりあえず遅すぎず動いてきた」
「なら一緒じゃないか」
「言い換えればそんな苦い、誰かの意思を押しつぶす全体の合意でさえ君の判断よりはマシと言える。なぜなら、個人で全員を無理やり同じ旗の元行動させたんだから」
「…………」
「そんな判断なんだから避難されるのは普通で。非難されて。非難されて。非難されて……次をどうすれば良いのか考えなよ」
「……!」
「君の選択は失敗に終わった。なら、次はどうする。どうしようもないなら、最後まで諦めないだけを握りしめていたら? 奇跡が降ってくるかもよ」




