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恩人の道化
「うわっ死にたくない。でも死ぬなこれ、悲しいぃ~~」
彼は私達の尊敬していた姿を粉々に壊し、道化けた。
「…………」
「ふぅ。まあ、恩人が悪を持っていても受け入れろよ。俺だって、死ぬという悲しい現実を受け入れたぜ。それだけじゃなくて、社会が悪なのも受け入れたし、それでも善を見出したし。暴れまわる子どもたちに疲れてもまあ、仕方ねえかなで頑張った」
「…………あなたは何を言っているのですか」
「いや、まじで子どもの世話って大変。死にゲーだわ。子供の行動は全くの善ではないし、それを支える大人も全くの善じゃない。人間は糞もするし、お酒を飲んで吐く時のゲロは汚い。でも、包んだぜ。愛するなんて照れくさいが愛した。まあ、そういうものなんじゃ、ねえの?」
彼は死んだ。私達が正義のために殺したからだ。最後の義理として彼の言葉を考えてみる……彼は多分、汚いのを受け入れろといいたかったのだろう。だが、彼の死体は汚く、近寄りたくなかった。




