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異能開闢~燃える炎~

 人間の脳の奥深くには何があるんだろう。認識によって世界観が構築され、世界観によって世界を認識する。されど認識で世界は変わらない。……そのはずだった。



 世界とは炎である……僕はそう思ってずっと生きていた。僕の世界は始まりから炎に満ちていた。

 僕が赤ちゃんの頃、病院で火災事故が起きてしまったらしい。原因は患者の煙草が原因だったようだけれど。

 正直、赤ちゃんの頃だからしっかりとは覚えていない。でも、世界が赤さと痛みと苦しさしかない時に何かが僕を連れて行くのが頭に残っている。でも、その連れて行くものは周りの赤よりもより赤い気がしたんだ。


 生まれたばかりの赤ちゃんを連れて一人になった母親は他の被害者とともに裁判をしたり、赤ちゃんだった僕をたった一人で育て上げたりした。僕が大きくなっても自治体に参加して正しいと思うことをしている。位牌の前で祈る母さんは泣いているんじゃなくてどこか怒りに満ちた目をしていた。その目に僕は何を思っていたんだろう。


 怒りと憎しみで何かをもやし、燃やされた者も内で何かを燃やしていた。そしてその炎がまた何かを燃やした。クラスは焼け野原になりそれでも歩みを止めない。誰かがいなくなってもまた燃えるために動いている。人は炎だ。とても痛く、熱く、それでも燃えるのを止めない。

 

 だからこうなったときも不思議ではなかった。元々僕の心の中にあったものが外に出てきただけだから。

 僕は階段を使い高い高いビルの屋上まで登る。地上は皆燃えていた。人は踊り狂い、そして黒焦げ動きを止める。まだ火が廻っていない所では速く逃げるために人が人を押し合い人は踏み潰していく。


 階段を駆け上る音がする。扉が開く。友達がそこにはいた。友達の彼女は地上の様子を見てショックを受けている。

「これが世界だろう……そう思わない?」

 僕がそう言うと彼女は涙を流した。な、なんで? 人を傷つけている悪が目の前にいるんだろう。君は悪が嫌いだったはずだ。だから怒りを燃やして向かってくるはずなのに。

 訳が分からず彼女を見る。彼女の目は涙に濡れている。

 気付いた。

 彼女は悲しんでいる。地上の惨状に、友達が罪を犯したことに。

 地上の炎から火の粉が舞い、皆が燃えている。僕もそうだったんだ。いつだって憎んでいた。父を殺した不注意な奴らに、クラスで人を傷つけるクズらに。でも、僕は燃えたいわけじゃなかった。悲しんでほしかったんだ。母親にみんなに。

 目から涙が零れる。感情が溢れる。よろめいて、屋上の縁に脚を掛けた。彼女ははっとして、僕に向かってきた。でも、僕は彼女が届く前に一歩飛んだ。ごめん、でも気付いたんだ。少しでも償う方法をこの炎は僕の世界観で出来ている、だから僕が死ねば消えると思う。悲しまないで、僕は君のお陰で冷たくなれた。じゃあね。

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