物語の安心感
「物語と現実の違いは何だと思う?」
「そういう言い方をするって事は、もう貴方の中に答えがあるんでしょ」
「僕は安心感だと思う」
「はぁ……安心感、ね」
「物語の内で人に嫌がらせするのが好きという設定のキャラがいるとして、それが魅力的だとする」
「まあ、そういうこともあるわね」
「でも、それが魅力的なのは縛りがあるからじゃないか? 例えば、少年ジャンプの作品ならグロさと悪さはその範囲で行われる。でも、現実ではそのような人物の行動が許せる範囲かは分からない。現実ではそういった思考の持ち主は、行くところまで行く可能性が高いんじゃないか?」
「少し差別的な感じはするけれども……確かにそういったあまり好まれない癖がある人に対して現実の方が厳しいかもしれないわね」
「ああ、それは安心感がないから……縛りがないからなんだ。物語には売れるように、不快にならないようにという縛りがあるけど、現実にはそれがない。だから怖い」
「確かに、現実では……なんというか……そう、不確実性が高い気がするわ。描写されている範囲では許容できる。でも、本当にそれで留まってくれるのかしら? 分からないから許容できる幅が減る。逆にその不確実性の狭さこそが物語の最大の魅力なのかしら」
「ふふ、やっぱり君と僕は似ている」
「はあ、だから貴方と友達をやっているんじゃない。ただ、忠告するけど、私には良いけど他の人にはもっと順序を踏んだほうがいいわよ」
「君がいればいいさ」
「全く……」




