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許せないモノと戦う言い訳
「こんなことをして得があると思っているのか!」
その私の正当な訴えに対して、奴は肩をすくめ、飄々と言い放った。
「許せないものに戦うのに得は関係ないですよ。それに、裁判をすることで小説のネタになるかもしれないじゃないですか」
裁判には膨大な時間とお金とかかる。それに「得など関係ない」だと? しかも、小説のネタ? 奴は狂っているのか?
「……本気か?」
「まあ、本気じゃないですが、建前にはなる。許せないものに対して戦えないのは言い訳がないから。だったら、表面だけでも言い訳があれば戦える……最後まで傷つけ続けてやる」
「……っ!」
その言葉を聞いた瞬間、背中が震えた。最後の言葉には染み込まれた執念が……怒りと憎しみがはっきり感じ取れたからだ。




