悪への変化
世界が今まさに救済されようとしている。ああ、光よ……。
「……なに?」
救済の訪れを待ちながら思いを馳せていると、近づいてくる足音がする。私の祈りを邪魔する者がいるとは……! だが、我の大義を妨げようとする連中は、すでに全て排除したはずだ。誰がここに来るというのだ?
やがて、その顔が見える。まさか、奴が……!
「……お前が来るとはな。なぜ、私と戦う? お前は無辜の人々の救済など気にしないだろうに」
そう問いかけると、奴はニヤニヤと笑みを崩さない。その笑顔が妙に癪に障る。
「ははっ! ああ、俺が悪党で、お前が正義の見方だって? なんとまあ、ここまで至ってもなお酔っているとはなあ。すごいなあ」
「……何が言いたい」
「お前も俺と同じさ。まあ、かってはそうだったかもしれないが、今ではお前も立派な悪党さ」
「なっ!」
私がこんなゴミクズと同じだと? そんなはずがない!
「下に見ていた奴と同じになったと知って、ショックか?」
「違う! 私は正義のために戦っている!」
「正義の為に民間人を虐殺して、邪魔な奴の家族を人質に取る。中々の悪党じゃないか。惚れ惚れするね」
「違うと言っているだろう!」
「まあ、そんな事はどうでもいいが……ここに来た理由だっけか? 悪党同志の殺し合いなんて一身上の都合で十分だろう。ああ、お前を殺す理由は簡単さ。お前がムカつくから。シンプルだろ」
「そんな理由で、私の大義に楯突くとは万死に値する。塵さえ残らぬと思え!」
「ハハハハハハハ!」




