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仲の良い食人鬼の会話


 ずるずる。


「どうした?」


「ちょっと……今日のあなた、変よ」


「変って、何が?」


 夫は首を傾げた。その動きにあまりにも強い違和感を感じた。まるで人じゃない何かが、人間の真似をしているかのように。急に鳥肌が立ち、私は恐怖に襲われた。ここは本当に私が今まで住んでいた家なのか?


「ひっ」


 私は説明できない恐怖から、その場から逃げ出そうとした。


「……えっ」


 なぜか足が動かない。奇妙なを違和感が足元から広がり、恐る恐る下を見ると…………ない、何もない。足が、本来あるべき足が。急に私の視界が暗転し、意識が遠のいていく。最後に見たのは。夫から生える赤い何かだった。




 ずるずる死体が散らばっていた。その中央で、二人の男がテーブルに座り、烏龍茶を飲んでいる。その光景はどこにでもある光景だったが、周りに散らばる死体の異様さが、その日常を歪ませていた。その死体は腸が飛び出ている。


「…………ずぅ」


「いつも食事の時間はワクワクしますな!」


 一人は静かに烏龍茶を飲み、もう一人はワクワクしながら人間の腿を食べている。静かな男がもう片方に話しかける。


「なんで、俺達はこうして人を食っているんだ?」


「それは、お腹が空いたからですな?」


「まあ、その通りだ。だが、本当にそれ以外の道はないのか」


「? どういうことです?」


「人間は動物を喰って後悔する奴もいるらしい」


「へえ、変な生物ですな」


「ああ、だが俺達の食べ物は喋りも考えもする人間だ。もっと後悔する人がいてもおかしくないはずだ」


「そうです? そんな餌を食べることに後悔する個体なんて見たことがありませんぞ」


「ああ、俺も見たことがない。不思議だ」


「不思議です? 餌を喰うことに抵抗がないのは当たり前のことじゃないです?」


「いや、そういう他の生物に共感する機能は、人間の学者によると集団生活をするうえで必要な機能らしい。だが、僕達は争わないだろう」


「それは、争っても意味ないからですぞ」


「なんでだ?」


「それは……餌いっぱい狩りいっぱいだからじゃないです?」


「そうだな……生物が同種を闘う理由は食べ物と交配のためだそうだ」


「交配です?」


「僕達には縁が無いがそういう繁殖方法があるらしい」


「へえ~」


「……そうか、交配や餌の奪い合い、そういう生態が違うから俺達は後悔しないのか」


「どうしたんです?」


「いや、俺は後悔しない事にもやもやがあったが、話していたら無くなった。つまり、何かをしたかったわけではなくて、単に解明したかっただけなのかも、自分の形を」


「スッキリしたなら良かったですぞ。拙者も貴公の話は面白かったですぞ!」


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