永遠の愛
20XX年、死後の世界が観測された。
しかし、その世界の住人は皆の表情は変化せず、ただ現世での行動を模倣している。その世界は残滓の世界と呼称された。
さらに観測が行われ、より詳細なルールが理解されていった。現世で死亡した住人が残滓の世界に出現するが、ただ現世の行動を模倣している。加えて、死亡した住人の9割ほどは確認されていない。
その後、新しい世界群が確認された。拷問が行われている世界、雲の上で笑っている世界。しかし、どれも話さず、人間的な行動は行われていない。
ある日、この事実が内部告発により世界に発信され、歴史で最大規模の被害をもたらした。
混乱が収まった後、世界的に実験が行われ、十数年後、人工的なあの世の作成に成功した。そこは現世と同じように生きることが可能になる夢のような世界だった。人類は死を克服したのだ。
だが、それによって犠牲になった物がある。混乱の中、人類に価値はないという思想のもと造られたアンドロイドたちだ。
人工的なあの世が作られた事によって、価値は反転し、アンドロイドはあの世にいけない劣った物だと認識された。人間とは違い永遠に存在できない物質に過ぎないと。
しかし、私はアンドロイドの彼女こそを愛した。友達には、あの世に一緒にいけないのにどうしてアンドロイドなんて選ぶんだと言われた。
他にも、所詮は人工だ何も感じることはなく単に条件分岐で行動しているだけ、魂などないと言われた。
人間もそうだろうという反論はもうない。永遠はあり、魂があるのだと科学的に証明されたからだ。
彼女は私を愛してくれた。魂の存在のみが愛の証明になるわけではないとそう信じている。
彼女は私を愛してくれた。それは寂しい男の妄想なのだろうか。違う、私と彼女は愛し続けている。
しかし、私と彼女の向かう先は違う。私はあの世に行き、彼女は土に変える。これから先、永遠の別れがありいつか彼女を忘れるのだとしても、それでも・・私は彼女を愛しているんだ。