灰色の短編集

力の責任感もしくは正当性

「神様。貴方はなぜこの世界を作ったのですか」

「なぜかなあ。多分、神という力を持つ責任感。いや、正当性のためかなあ」

「正当性のため？　貴方は誰に肯定されたいんですか？」

「僕と同じような人の為に。僕が美味しいものを食べた時に感じる思いは多分君たちと似ているんだと思う。魂の感じ方が似ているんじゃないかな。だから、君たちを他人と思っていると同時に肯定されたい、否定されたくないのかもしれない」

「貴方は人間みたいですね」

「僕は神であったんじゃなくて神になったんだ。昔は君たちと同じようだった。でも、仲間も所属している組織も社会も同じ種族も壊して神になった。神になったから世界を作るべきだと思って作ったんだ」

「貴方は単なる破壊者だったのですか？」

「正当性はあったよ。僕を殺しにかかって来た。僕が強すぎるから組織運営上邪魔になったんだ。そして、その組織は社会で大きな役割を果たしていたから破壊した僕は社会の敵になった。殺して、殺して、殺して、途中で命乞いもしてきたけど、今更遅かった」

「単なる正当防衛だと？」

「どうかな相手が殺しにかかってきたのも事実だし、僕が世界を壊したいという欲望を持っていたのは事実だったな。そして、戦いの果て僕は神になった。一人で膨大な力を抱えた僕は世界を作ることで、力に対する責任を正当性を果たすことになる気がしたんだ」

「貴方は壊したことに罪悪感を覚えていないんですね」

「まあ、そうだね」

「では、本当に力に対する正当性のためだけにこの世界を作ったんですね。いや、この世界ではなくて世界さえ作れればそれで良かったんですね」

「そうだね、この世界がこうなったのは偶然。世界を作ること自体が目的だった」