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廃墟に響く声


『だれかーだれかいませんか~』


 廃墟のビルが立ち並ぶ中、傷だらけでボロボロの服を着た男が誰かを探している。その声は場違いなほど明るく、どこか気色悪さが漂っていた。


「こっちだ、早くこいっ」


 何者かが小さい声で男を呼ぶ。


      ・

      ・

      ・


 何者かは、比較的健在な建物の中に男を連れて行った。薄暗い部屋の中には、いくつかの簡素なベッドと少しの食糧が置かれている。からうじて人が生活している痕跡があった。


「おい、お前! あんな所で大きな声を出して奴らに見つかったらどう………す……」


 その者の言葉はそこで途切れた。次の瞬間、男の手が鋭利な刃に変化し、その者を一瞬で串刺しにした。


『あっ、いたんですか~』


 明るく響くその声のまま、男は刃を引き抜いた。鮮血が飛び散り、刃が抜かれた後の身体は力なく床に崩れ落ちる。もう二度と動くことはなかった。


『だれかーだれかいませんか~』


 再び明るい声が廃墟に響く。求める何かを見つけても変わらずに。男は何かを探しているのではない。声に近づくものを処分するために存在している。


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