森の中の殺人鬼
「ここはどこだ。私は家にいたはずだ。いや飛行機に乗っていたか、いや婚約者とホテルにいたような。くそ、記憶が混乱している。こんな森の中に来た覚えはないぞ」
とりあえず動き回っているが数時間立っても何もない、ただ木々があるだけだ。くそ、動かないべきだったが、だがあそこにいても何もなかった。それに、誘拐したやつがいるなら鉢合わせするとまずい。
「クソックソッ、私はこんなところにいるべき存在じゃないんだ。一流大学を卒業し、有名大企業に就職し、出世コースに乗っているエリートだったはずだ。美しい婚約者もいる。早く元いた場所に戻らないと」
ッなにか光った。
「おい、誰かそこにいるのか。助けてくれ、金なら持っている。もとに場所に戻ったら何でもお礼をする!」
その言葉に興味を抱いたのかそこにいた人物が姿を表した。
……だが、それは助けてくれる人間などではなかった。そいつの手には大きな包丁を握っていた。そして、豚の被り物をしており服装は血しぶきがついていた。
一目散に逃げた。あいつが犯人だ。ひと目で助けてくれるやつじゃないとわかった。必死に逃げて、ある程度巻いたと思った。
ガッ! 急に前に動かなくなる。恐る恐る、脚を見てみると、両足とも切られていた。自覚すると痛みが襲う。
「いたい!いたいいたい!どうしてこんな事に」
そして、足の方にはさっきの豚の頭の被り物をしたやつがいた。
「まって、待ってくれ、なぜこんな事をする、お金か、お金ならある。うちの家はお金持ちでな。なんでも、何でも払うから」
包丁が振りかぶられる。なんでこんな事に、そんな疑問を最後に意識が闇に落ちた。
はっ、慌てて全身を触った。ある、ある。
「もう~どうしたの」
隣の婚約者が困った声を出した。夢だったか。良かった。
「いや、なんでもないよ」
カーテンを開けて言った。
「今日はいい日になりそうだね」




