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温度差
私の国は戦争の国だ。そして、戦争を起こした。理由は様々な要因が絡まって起きた。経済的でもあり、思想的でもあり、安全保障に関するものだった。
だが、そんな事は私にはどうでもいいことだ。しかし、その結果として私は戦場に行く。そして、その戦争を他の国が見ている。
それは嘲笑っていたり、哀れんだり、私の国と合わせて、自国の安全に思いをはせる。その気持ちが私にも分かる。私もそちら側だったからだ。
危険な他国を別に笑いものにしないが、自分の生活が優先で、他国のことを見識に加えて自分の政治について考えるのが理性的な対応だと思っていた。
今、私は見ているという事実もその気持ちも理解しながら命をかける。……温度差で風邪を引きそうだ。
安全だという気持ちがわかりながら、その気持ちを理解しながら、その人と通信されながら私は安全ではない冷たい場所に行く。
そう、暑さが分かるからこそ冷たさが分かるんだ。ここは冷たい。人々がいるということが暖かったんじゃない。娯楽があるということが暖かったんじゃない。安全ということが何よりも暖かったんだ。




