スカッとする奴隷商人討伐
窓の向こうにくちゃくちゃ食事をしている肥え太ったデブがいた。そのふっくらした体はデブが裕福な生活をしていることを示していた。だが、そいつの周りの人達はガリガリに痩せており、死んだような目をして男に付き従っていた。
デブは食事がおいしくなかったのか、食事を周りの人間に投げ捨てた。周りの者はガリガリした姿相応に力がなく吹き飛ばされたが、吹き飛ばされた者はありがとうありがとうと感謝を重ねた。なぜなら、捨てられた食事を食べることができるからだ。
そのように誇りも何もかもなくした姿にデブは笑い、唯一痩せていなかった若い女性を寝室に連れて行った。
「自らの我欲のために他者を犠牲にするお前は許さん!」
俺は我慢できなくなり屋敷の窓から飛びこんだ。
「全く、飛ぶこむのはちゃんと準備ができてからって言ってたでしょう」
「まあ、いいじゃねえか。あいつが行かなかったら俺が行っていたぜ」
続いて、仲間の二人が入ってきた。
「何者だ。この私を誰だと思っておる!」
デブは叫んだ。
「はい、わかっているわよ。悪名高い奴隷商人のゴールさん」
冷静ではない俺の代わりに仲間の魔法使いが語った。
「ふん、儲けた商人に貧乏人は嫉妬するものだ。まさかとは思うが、だから屋敷に入り込んだと言わんよな」
ゴールはそう言い捨てた
「何を言っている!今、目の前で人を傷つけていたじゃないか!」
「何もわかっておらん若造が、青臭い正義感だけで語るんじゃないわ。こいつらは私の奴隷だ。奴隷に対してはすべての行為が認められている。傷つけても、殺してもなあ。ああ、いやコイツラはモノだからな。壊してもが正しかったなあ! はははははっ」
そう言ってゴールは笑った。怒りで目の前が真っ赤になる。その前に魔法使いが、
「それは、正当な手段で手に入れたら、わよね。知っているわよ。あなたが賊と繋がり違法な手段で人を誘拐しているのを」
「なっ、どこからそれを」
「甘かったわね。賊はいつ切り捨てられてもいいように証拠を持っていたのよ。あなたとのつながりをね。これがその証拠よ」
そういって、証拠を見せた。そこにはたしかに賊とゴールとのつながりが証明されている。
「ぐぬぬぬ。…………はっ。だが、その証拠さえなくしてしまえば何でも問題ないわ。ここにそれを持ってきた愚かさを呪うがいい!」
そう言って、手を叩くと、続々と武器を持った凶悪な顔をした奴らがやってきた。
「へへへ、旦那ぁ。出番ですかい」
「そうだ。そいつらが持っている物を持って来い。ああ、そいつらは好きにしてもいいぞ。わしの趣味ではないが中々顔も整っているだろう」
「旦那はわかってらっしゃる」
「……いつまでこの会話を黙っていればいいの?」
その声は俺が少し冷静になるほど怒りを押し殺しているのがわかった。だが、コイツらに遠慮する必要なんてない。
「もう必要ない、行くぞ」
賊たちは襲ってきたが、聖剣で切り裂いていく。
「馬鹿な、たった三人だぞ、早く倒さんか!」
「ヒィィ! あんな化物たち倒せるわけがないだろう! 俺はもう逃げるぜ」「俺も」「俺もだ」
そう言って、賊たちは逃げていった。
「任せろ、俺が追ってくぜ」
戦士は賊たちを追うのを請け負ってくれた。
「ああ、任せた。俺たちはこちらを片付ける」
そう言って、ゴールに近づいていった。ゴールは後ずさる。
「待て、何がほしい、金か、奴隷か、なんでもやろう。わしは何でも持っている」
「お前に人々に苦しみが分かるか。お前は何も待ってない! 人々を傷つけたことへの報いを受けろ!」
ゴールを斬った。周りの人達は今起こったことを受け入れられていないようだ。
「君たちは自由だ」
聖剣を掲げた。聖剣が光を放つ。周りの人たちは徐々に死んだ目を止めて、いつからか歓声があがり始めた。その声は解放された喜びに満ちていた。




