他人を思えた過去
自分の事しか考えていない僕だ。化け物だ。しかし……僕は……泣き言はいらない。僕は世界を滅ぼす。なぜなら、邪悪だからだ。邪悪は世界を滅ぼさないと安心できない。
偶然の果て、一人きりだと思っていた僕に近くで居座る人が出てきた。
「貴方が思う愛ってなんですか?」
「捧げることかな。そんな小説があったよ。もう死んでしまったヒロインに人生を捧げる主人公の物語が」
「それが貴方が思う愛ですか?」
「僕には出来ないことだからだ。自分の何かを他人に与える事、捧げる事。僕には愛がない」
寒い中、星を見た。綺麗で、綺麗すぎてなぜか涙が出てきた。
あの時の会話を思い出す。今でも彼女は僕のそばに居てくれる。
「……でも、僕は愛しているのかもしれない。君を愛せない僕だけど、君を愛しているのかも知れない」
僕の唐突な言葉にも動揺せず彼女は返してくれる。
「……でも、僕は愛しているのかもしれない。君を愛せない僕だけど、君を愛しているのかも知れない」
僕の唐突な言葉にも動揺せず彼女は返してくれる。
「そうですよ。分かっていなかったのですか」
「君は僕をずっと信じてくれたの?」
「美しいと思う時があるでしょう、綺麗だと思うときがあるでしょう。貴方はずっと……私を美しいと思ってくれましたよ」
「そうだね、君はずっと美しい」
……でも、それは僕が感じる感動に過ぎなくて
「それが愛ですよ。感動も出来ないものに捧げることが出来るわけがない……まあ、貴方は理屈っぽいから納得しないかも知れませんが……
……それでも、貴方が他人を想えた過去があったことは忘れないでください。それさえ忘れなければ私は満足です」




