肉体改造依存者
先日、肉体改造依存者による暴走により15名が亡くなった。自分ひとりだけが死ねばいいものを周りを巻き込んで死ぬから迷惑だ。しかし、行動の自由が守られている現代において肉体改造は整形と一緒、好きにしていいというのが常識だ。だから、失敗により本人も周りの人も傷つこうが禁止させられることはない。
空はナノマシンによりより適切な気候を維持する。道はロボットが人間と同じぐらい歩いている。その人間も三つ目を持つ人、羽が生えている人など様々な形、色の人とがいりる。電子タバコを吐き出しながらロートルにはついていけねえよと愚痴を溢した。
職場で先日の暴走事件の後始末を終えた帰り道。大男が目の前に現れた。その爬虫類のような威圧的な顔とその強靭な体躯は身体強化型肉体改造者であることを示した。
「はははは、おじさん、運が悪かったな。この、体の試運転の相手と選ばれるとは。せめて、この強靭!最強!無敵!の肉体の手にかかれることを感謝しながら逝くが良い!」
一歩踏み込んだと思ったら、大男は目の前にいた。とっさに防御すると、吹き飛ばされ、後ろの壁にぶつかった。
その様子に大男は目を鋭くさせた。
「……変だな? 俺の一撃を食らったら雑魚どもは木端微塵になるはずだが。お前も選ばれし肉体改造者か?」
よろよろと立ち上がりながら言った
「いや、俺はあんたのような勘違いした犯罪者を捕まえるただの警官だよ」
そう言うと、大男は激高した。
「勘違いだと、ふざけるな! この強靭無敵の体が見えぬのか。雑魚どもを自由にできるこの体こそ俺が選ばれた証。……選ばれた者同士見逃してやろうと思ったがもういい。この無敵の体の全力でゴミに返るといい!!」
大男が向かってくる。さっきよりも速い速度だ。だが、
「……この時代に嫌なことがあっても、俺もまたこの時代の結果なんだよ」
視界には、大男の動く姿、全てが見えていた。クロックアップ、この時代であっても治安維持に所属している一部しか持ち得ていない力。その力を持って、相手が認知できない速度で動き、持っていたスタンロッドを当てる。これだけで勝敗は決した。
職場に電話をかけ、応援が来るまでの間考えていた。周りは戦いの結果によりボロボロになっている。身体強化型の肉体改造者が戦うということはそういうことだ。
そして、こういった事件が増えている。裏に技術を提供するブローカーがいるのかもしれない。大変なことになってきたと感じながら、こうも思う。たしかに裏で技術を提供する黒幕がいるのかもしれない。しかし、その技術を受けようとしたのは本人の意志だ。
「全く、自分から自分の体を改造とする人の気持なんかわからないよ。どうして、親にもらった体を粗末に扱うんだい」
その言葉に誰も返答せず、彼は応援が来るまでの間ずっと立ち尽くしていた。




