灰色の短編集

すれ違い

「あなたの悩みはなんですか」

　恋人と話が合わない。ルマリア関数の幾何学的美しさなんか言われても

「そう」

としか言えない。悲しい、話が合わないのは悲しい。昔はそんな彼がかっこいいと思っていたけど、今は悲しさの方が強い。彼もそれを感じているのが分かる。どうすればいいのかな。

　よし決めた。勉強しよう。彼の勉強を教えてもらおう。そうやって理解してやる。

　彼女が勉強を教えてくれと言いだしてきた。確かに僕も最近の会話には危機感を感じていた。でも、そこで勉強を教えてくれと言われるとは。

　彼女の事を改めて惚れ直した。彼女のそういう真正面から戦う強さに憧れて付き合い始めたんだと思い出した。これからも色々あると思うけど彼女となら乗り越えられると思う。

　……いや、僕も彼女に釣り合うように頑張り続けないといけないな。二人が頑張るからこそ一緒に居続けられるんだ。