雪の日の教会からの依頼
雪が降る中、教会の前でシスターとフードを被った男が会話している。
「なぜ、貴方はこんなにも残酷なのですか」
シスターは責めるように、或いは知るために質問する。
「恐怖からだね、残酷に慣れれば残酷から守られると信じていた」
男は若い声で柔らかく返した。
「……では、貴方は恐怖を克服できたのですか」
「ある程度は解消した…今度は罪悪感が僕を蝕んだ、それもまた別の方法で解消した。そして、また別の感情が……結果、現在は昔よりも幸せだよ」
「……あなたは…自分の感情しか持っていないのですね」
「他人への感情は満たされるために消していった感情の一つだよ」
「……寂しい人」
「そうだねえ。僕の世界は静かだよ」
雪が降っている。この街では二人以外誰も動いていない。ただ赤く染まった遺体のみが積み重なっている。
「これで教会からの依頼は達成かな」
「…………はい。これで教会からの依頼は達成です」
「どうも。また依頼があったらよろしくね」
「………………」
シスターは反射的な否定の言葉を抑えただ黙っていた。そんなシスターの様子も気にせず男は去っていった。
雪はただ積もっていく。




