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過ちを犯した男

 はっ、はっ、これで大丈夫だ。私は大丈夫だ。こんなことは間違っている。だから正常に戻るはず。林の中で息を切らしながら何かを呟いている男を見ている者は誰もいなかった。


 玄関の前に警察がいる。怯えた様子で扉を開ける。


「ど、どのようなご用件で」


「いやあ、お察しの通り私たちは警察です」


 そういって、彼らは警察手帳を見せた。


「ちょっと、このマンションで行方不明になった人がいましてね。何か知っている事がないか聞いて回っているんですよ」


「そ、そうでしたか、どなたでしょうか」


「この人です」


「ああ、彼女ですね。仕事が終わる時間が同じだったのかエレベーターで見ることが多かったんですが、見なくなったので引っ越ししたのかと思いましたが行方不明だったんですか」


「いつ頃まで見ていましたか」


「そうですねえ……1か月前ほどまでは見ていた気がします」


「他に何か思い出すことがあればよろしくお願いします」


 ふぅ、良かった。疑われれていないようだ。まあ、マンションの隣人に過ぎないしな。気づかれるわけがない。そうだ、あんなことが起きるなんておかしいんだから。


 1か月前、久しぶりに高校時代の友達と出会った帰り、いい気分になって運転していたら、音がした。恐る恐る見てみると、人が倒れていた。頭から血を流しておりピクリともしない。


 その瞬間私の運命が壊れたのを感じた。私は選択をしなければいけない。私はお酒を飲んでいた。もしこれがばれたら私は危険運転致死罪となり刑務所に長い期間投獄されることになるだろう。


 いつもならお酒を飲んでいてもあんなことは起きなかった!そうだおかしい、こんなことで私が刑務所にいくのはおかしいんだ。


 私は死体を隠した。暗かったし、人気のない場所だから気づかれないと思う。気づかれない…はずだ!


 そして、今の今まで誰にも気づかれていない。大丈夫だ。あの日のことはおかしかったのだから、正常な私が捕まることはあり得ない。大丈夫だ大丈夫だ。知らずと私は爪を噛んでいた。


 あの日から運命は変わり、その壊れた人生を歩んでいくということを本人だけが知らなかった。

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