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泣きたくなかったおじさんの話
私は他人から責められて泣くのが嫌だった。だから、頑張って頑張って私の表面は固く、固着して、鉄の仮面をかぶれるようになった。いつしかそれが私に成れて。私は安心したんだ。これで誰にも干渉されないと。だから、家族も子供もどんな他人も私には道具に過ぎなかった。
でも、私はタクシーを乗りながら子供の訃報を耳にしてその場に倒れ込んでしまった。そして、すぐさまその現実を受け入れた……受け入れたはずだった。手続きも葬式も全てこなしたはずだ。なぜか私にその実感はないが……だが、火葬場で燃え残った骨を見て私は……私、は…………頬に流れ落ちるものは何だ。私は何を感じている。




