火に囚われた男
あの時感じた時の、熱い、痛い……なにか。
薄れゆく意識の父親の表情を覚えている。でも、僕は燃え盛り、母親も黒く動けなくさせたゆらめく赤をずっと見ていた。
それから僕はもうあれに囚われて抜け出ることはできなかった。
僕はいや、私は研究者になった。火とは何なのか、どんな可能性があるのかを追求し続けるために。そして、その研究成果が現世に出現して大いなる力を発揮する時僕はどうしようもなく興奮した!!
そして、力には痛みと破壊をもたらし……私ではなく妻も子供を代償として連れて行った。
私の妻も同じ専門の研究者で子供も仕事場に連れてくることが多かった。そして、私達は兵器の開発をしていた。
しかし、私はまだ、炎の魅力に取り憑かれている、家族を失おうとも、それで人生が損なわれようとも。それでも、まだ。
「痛みと苦しみ、大いなる力がああなんて美しいのだ」
私が子供が大好きなお菓子を持ち望んいたときの表情で燃え盛る街を見ていた。
「ゴホッ、ゴホッ。触れていないものも痛めつけるこの力。素晴らしい」
地面に倒れゆく、もう立っていられないようだ。これで終わりか、ペンダントの家族を見ながら最後を告げる。復讐はした。いま、そっち……に。




