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子供に対しての教育の影響


 「【教育とは行いを変えるものであって、性格を変えるのは洗脳だ】なので、僕が受けたのは洗脳だと思うのですがどうですか」


 口が達者な子供が言い訳してきた。担任から勉強を真面目にしなくて困っていると副担任である私に押し付けられた。


 まあ、授業を真面目に聞いていないのに毎回百点をとるような子供だ。担任がもっと、と期待する気持ちは分かる。分かるが、私としては自由にさせてもいいと思うのだが。


「まあその言葉は理想論だから。実際はその言葉を利用するならばすべからく洗脳要素あるからね。だって、性格を変えないならば、制限できる行いなんて限られちゃうからね。

 自分のために他者を傷つけることに抵抗できない性格に人を傷つけない行いを刻み込んでも、先生とか親が居ないところで人を傷つけるだけだしね」


「では洗脳してもいいと」


「実際、教育現場って厳密にやると厳しい倫理的な矛盾が出そうなところだからね。それぞれの先生がその矛盾を自分なりに解消している」


「では、貴方はどういう解消をしているのですか」


 どうやら、この少年は少しこっちに興味が湧いてきたみたいだ。だが、私も子供に私なりの教育論みたいのを語るなんて……この子には何かしら特別な何かがあるのかも知れない。


「まあ、私は人を傷つけること以外は大体、自由意志に任せているかな」


「具体的にはどういうことでしょう」


「言ってしまえば勉強に特化した頭脳にならなくてもいいと思うわ」


「それは責任放棄なのでは?」


 少年は意外そうな表情で私を見る。まあ、少年が関わる大人は皆勉強を進めてきたのだろう。


「いやあ。塾ならともかく学校の場合は勉強に特化させるのは勤労義務の範疇に無いと思うわ」


「それで、その子供が不幸になっても……ですか?」


 ……やっぱり、この子には単に押し付けられていると思うのではなく、大人たちの立場を考える程の理解力がある。


「責任放棄とはそういうことじゃないかしら。逆に無理に抑え込んで不幸になることもある。まあ、勉強が出来ないとこの社会で上に行けない確率が多いのは確かよ。だったら無理やりにでも勉強させる人がいても、全く論理的ではないとは思わない」


「でも、貴方はしないんですね」


「全ての人間には不幸になる権利がある」


 青年はその強さに少し引いた。


「なんて、ちょっと強すぎたからかしら。性格を変える権利はどこまであるのかという話よ。何にかしろ性格を変えないといけないにしても評価を良くするためにそこまで形を変える権利はあるのかという話。私としては自由の方を尊重する」


 少年は考え込む。少し、思想が強すぎる言葉だったかしら。私自身の考えを語っただけだけど、それで影響を与えすぎるのも本意じゃないわね……少し、失望させようかしら。


「……まあ、そうわね。程度の問題でもある。考えを変えることに怯えすぎて必要最低限に過ぎなかったかも知れない。もう少し教えこむとしましょうか」


 どう、これで失望したかしら。


「……あなたは


 キーンコーンカーンコーン


「あら、もうこんな時間ね。今日はもう大丈夫よ。担任には私から言っておくわ」


 少年は少しの間黙り込み、そして言った。


「明日のこの時間、相談してきてもいいですか?」


「……いいわよ。困ったことがあったらいつでも来なさい」


 少年は帰っていった。私の言葉、あの子にどのような影響を与えたのか分からないが強い影響を与えてしまったのは確かなようだ。


 私は、子供にあまり影響を与えたくはない。でも、影響を与えてしまうものだ。その、影響を自覚することもまた先生の仕事かもしれないと私は思った。



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