憧れの幼馴染
風船が飛んでいる。幼馴染は木を駆け上り空中を舞うように風船を取る。
風船を離してしまった女の子がお礼を言っている。女の子はお礼に近くの喫茶店を誘っていた。だが、その一目ぼれした顔をみれば理由は明白だった。でも、理解できる確かに絵のように綺麗だった。
こういう事はよくある。僕の幼馴染の颯はかっこいい。優しくて、運動神経もあって、何かあったら率先して動くんだ。その姿を一緒にいる僕はずっと、見てきた。
もう一人の幼馴染の加奈が危ない真似をしたことを楓に叱った。確かに、一歩間違えれば大怪我したかもしれない。颯は謝って、加奈は怒っている。でも、その雰囲気はとても自然で大人になっても一緒にいるんだろうな。
加奈は僕の初恋の人だ。でも、颯に恋をしている。別に僕よりも颯に恋することはおかしくない。
けれど、それ以上に決定的な事件があった。土手で遊んでいたら加奈が川に落ちた。その時、一瞬だった。迷っていた自分と違って、あいつは迷わず助けに行った。
僕は初恋の人が溺れているのに動けない人間で、あいつは困っている人がいればすぐ動ける人間だということだ。
僕はあの時のことを恥じた。次こそ動けるようになりたかった。次の日から道場に通い、反射神経と身体能力を鍛え、なにかあったとき動けるようイメージトレーニングを行う。
これで、次は恥ずかしくない僕になれるのかな。颯が加奈と話している時、視界の端で今にもひかれそうな猫がいた。
僕は反射的に飛び込んだ。
「ドン!!!!」
……衝撃と満足感の狭間の中、これ…で…僕……は……
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あいつは、優しい奴だ。誰かが傷ついた時、すぐに絆創膏をもってきて、みんなが面倒くさがる事も何も言わず動くような奴だった。
そんなあいつにかっこいい所見せたくて人を助ける行動をしていた。あいつはそんな俺をかっこいいと言ってくれたから、もっと色々な人を助けようとした。
……多分俺は、あいつのことが好きだったんだと思う。こんなのおかしいと思うから誰にも言わなかったけど。
なあ、これで満足かよ、何も助けられていないんだぜ。ネコも死んじゃったし、家族も悲しんでいる。何より、おれもう死んでしまいたくらい悲しいよ。始めてあいつのことを恨んだ日だった。




