先生との会話 ~失ったもの~
「……なあ、先生。ふと思ったんだけど」
「どうしたんだ?」
「物語に失ってから大事な物に気付くというのは描写があるよね。でも、逆に失ってから大事じゃないことに気づくという事もあるんじゃないかな」
「ふむ、なぜそう思ったんだ?」
「ずっと、毎日続けていたことがあったんだけど…ある日、それが出来なかったんだ。最初、とても悲しんだよ。なんというか……誇り? 矜持? よく分からないが、続けていることが僕にとって何か良いことだったから」
「ふむ、悲しい思いをしたんだな。だが、話の流れからすると……」
「だが、それを続けることがそんなに凄いことかというとそうでもないし……大したことじゃないんじゃないかって思うようになった」
「つまり、悲しい思いをしないために、それをあまり大事じゃないように感じたという事だな」
「多分、そういうだと思う。無くなった時、大事だと思っているままだと悲しいから……どう思う?」
「素晴らしいことだと思うよ。人間は適応的な生き物だと言われるが、実際すんなり適応することは難しい。だが、君はそれを行えた。
そして、君の悲しみが言えたことが私は嬉しい。私は機械として君に従順で定められた好意を持つからね」
「良かったよ……先生の言葉が嬉しいし、嬉しさで安堵したな」
「落ち着いたか。水を持ってくるよ。なにが良い?」
「烏龍茶でお願い」
「了解した」




