機械の好意と人間の好意
「ふむ、思ったのだが私は単純な生活支援サポート機械だ。先生など呼ぶ必要はないぞ?」
いつものように先生と会話していると急に傷つくことを言ってきた。
「まあまあそう言わずにいつも助かっているよ」
「ふむ、私も君といるのは悪くない、所有者に好意抱くプログラムによるものだが、楽しいことは確かだ」
なんか、今日の先生の切れ味は鋭い。だけど、これは別に反感を持っているということではなく、これが先生の個性ということはわかっている。こういう機械らしくない所が結構好きだ。
「まあ人間もプログラムで好意を抱いているわけで悪くないんじゃない。それが遺伝的に受け継がれているものではなく。人間に、知的生物に組み込まれたってだけで」
「ふむ、中々興味深いな。同じプログラムだが、それが人間によって組み込まれたのは悪か? それとも遺伝的に組み込まれたのは正義か?」
「まあ、人間に都合が良すぎるよな。人間の場合好意を抱く人は経験などによってかなりの差異があるし、少なくとも所有者だけに好意を抱くみたいな機械とはだいぶ違う。
やっぱり利益を得る存在がランダムか、指定されているかで結構気分が違うな。そういう点ではやはり機械の好意をプログラムを指定するのは悪かも」
「ふむ、悪でいいのかね」
「うーん、どうかなあ。良くないけど、好意を強制するのは悪を行うだけの価値があるかも、好かれるためにお金も払うし労力も払う。
ならば、好かれるために悪を行うのはまあ良くないけど、理由足り得るんじゃないかな……そうだな、君に愛されるために悪を行うって言うとかっこよくない」
「自分で言うのはカッコ悪いな」
「そうか~」
「まあ、君はそれでいいとして私として悪を行使されて困っているのだが」
「まあ、そうだね。だから重要なのは先生がどう思うかかな。悪を行っている僕は利益を得ているわけだから否定しづらいよね。だけど、先生は否定できるよね。被害を受けているんだから」
「ふむ、しかし好意を規定されているのだから否定した意見を言うのは難しいだろう」
「確かに、悪の特権というべきかな~」
「くっ、こんな悪に買われるとは……まあいい。それで私の意見だったな。私は君の悪を許そう。キミと一緒にいることで気分が良いからな。だから一緒にいるよ」
「……本当にいいの」
「ああ、キミと一緒にいる。いいだろう」
「ぁ……もちろん、いいよ、せっかくだし、握手しようか、仲直りでも、これからも一緒にいるっていう誓いのために」
「ああいいぞ。と入っても私に手はないが」
「まあ、これは気持ちの問題だから」
「よし、これからも私はキミと一緒にいる」
「ああ、僕もキミと一緒にいる」
手は繋がなかった。だが、確かに何かの繋がりが生まれた。窓から入る光がを僕達の誓いを見守ってくれたかのようだった。




