最初の罪人カイン
楽園とは人間が到達してはいけない場所である。楽園には荘厳で豊かで永遠があった。故に我らはそこから抜け出したのだ。我らは原罪を持つ。最初の罪人カインにより我らは罪悪感を得た。我らは我らの形であってはならないと。故に我らは皆、より良い形を探す巡礼者なのである――─────ルーミナーの書。
「こんな物が今、世間で賑わしているらしいわよ。全く、人間は馬鹿よねえ。なんで今の自分に満足しないのかしらね」
俺の相棒がチラシを見て人間を馬鹿にする。
「さあな。そんなことよりも日々の日常を過ごすのが大事だろう。さっさと、依頼を探しに行くぞ」
「わかっているわよ。ねえ、今日は依頼が終わったら甘いのが食べたいわ、先日オープンしたケーキ屋に行きましょう」
「はいはい」
あいつはいつも素直だ。欲しいものがあればほしいと言い、悲しい事があれば悲しいという。
……実は俺がカインだと知ったらあいつは驚くだろうか。
楽園から出て数千年。罪は逃がしてくれず、ただ、重ねるだけ。あいつはそんなこと知らない、綺麗なままだ。だからこそあいつはこのままでいて欲しい、これがエゴだとは知ってはいるけれど。
「ほらっ、早く行くわよ」
「おいおい、そんな慌てんなよ」
そういってカインは相棒の後をついていった。




