悪魔の恋
強い衝撃と共に目が覚めた。周りを見渡すと見覚えのない場所にいた。
「ここはどこだ。俺は確か・・・・」
思い返そうとするが何も答えが出ない、それどころか何か引っかかったように自分の事が思い出せない。ただ、何かをしなければいけないという衝動が存在した。そんな時、言葉が聞こえた。
「ここは墓場よ」
声が聞こえた方へ振り向いた。そこには銀髪で褐色の肌を持つ美しい女性がいた。・・・・思い出せない。記憶を失う前の知り合いだろうか。
「覚えてる? あなたは魔物に殺されたの」
その言葉に、おれは頭が割れそうな痛みと共に自分が何者か思い出した。そうだ俺は・・・・勇者だった。そして何者かに殺された。不思議と殺されたときの事は思い出せないが重要なのはそこではない。ただ、道半ばに死んだことが重要だ。だから
「思い出した?あなたが死んだってこと」
「ああ、思い出したよ。確かに俺は死んだ」
「思い出したのね良かった。それで、どうする、もしよければ」
「ああ、だから魔王を倒す」
「・・えっ。」
「途中で死んでしまった。だが、確かに俺は勇者だった。まだ意識があるというのなら諦めるわけにはいかない」
「なんで。もう死んでしまったのに、苦しい使命なんて守らないで好きに生きていいのに、どうしてまた戦おうとするの」
「好きに生きるという事が勇者として戦うという事なんだ。だから、たとえ好きに生きていいとしても僕は戦う」
「・・・・そう」
「それで、ええと君は」
「私は・・・・そうね、君と一緒に旅をしていた魔法使いよ」
「そうなのか。正直、記憶がまだ曖昧で思い出せなくて申し訳ない。だが今まで一緒に戦ってくれて感謝する!もしよければこれからも一緒に戦ってくれないか」
「・・・・いいわよ。私はそうすることしかできないからね。一緒に戦いましょう」
「ああ、ありがとう!」
・・・・あなたは使命を忘れられない、たとえ死んだとしても、でもこのまま旅をしたら本当に終わってしまう。だからあなたを殺してでも、それでも足りないなら何をしてでも止めてみせる。悪魔である私が唯一思った他人への気持ちだもの、絶対に譲らない。




