入学式前日
私と木乃香が乗ったエレベーターは最上階の27階まで到達した。
エレベーターから降り、たった一つの扉の鍵を開けると美しい景色が広がっていた。
ベランダに出れば、天の川等の星空や夜景が楽しめる最高の部屋になっていた。
しかし、いろいろなことがありすぎた今日なので肌のケアや歯磨きなど最低限のことをしたらベッドに倒れ込むように寝に入った。
木乃香が「体調大丈夫?」など心配をしてくれて着替えの時や肌のケアの時など手伝ってもらった。木乃香は本当に優しい人だと改めて感じた。
ベットに横になった瞬間に眠ってしまったが、普段から長く寝れる体質ではなかったので深夜1時に目が覚めてしまった。隣で木乃香が心地良さそうに寝ていたので起こさないようにゆっくりと動き、ベランダに出て星を見たいと思った。少し寒かったので上着を羽織ってベランダに出た。ベランダに出ると屋上まで上がる階段があったので迷うことなく階段を上がってみた。約20段の螺旋階段を登ると噴水が中央にあり、周りは桜が咲いていて幻想的な風景が屋上にはあった。ベランダに出る前にメイドさんからあったかいポットを貰ったのでベンチに座り、1人の落ち着く時間を作ることができた。
1人の時間が落ち着くのは何故だろう…
ゆっくりとポットに入った紅茶をコップに注ぎ、香りを楽しみ紅茶をゆっくりと飲む
星や景色、季節ごとに変わる植物を体全身で感じる
私にとってこの時間は何よりも贅沢な時間だ。みんなで宴会のように騒ぐことや誰かと花見をすることは違う、1人でいるこの時間こそ私にとって最高のひとときなのだ。考え方はそれぞれあると思う。1人何か寂しそうとか1人でいて楽しいのとか多くあると思う。
でもそれが一番私にとって、その人にとって好きなのだったらいいじゃないか1人だとしても。人それぞれの価値観があるんだから。
風が吹けば桜が散る。
その桜を見て紅茶を飲む
月が光っていればその光で充分だ。
この時間がこの季節で1番好きなこと
今年も無事に生きて私だけのこの特別な時間を過ごすことができた。私を救ってくれたみんなありがとうございます。今までは一瞬しか時間を取れなかったのが長い時間、自由にこの時間を過ごすことができます。本当にありがとうございます。
太陽の光が差し込み始め、星たちが次の仕事に向かう頃に寝室に戻ろうとしたが習慣化されている就寝時間をとっていたため眠くならず、メイドに何か私ができることはないかと聞いてみたら、木乃香のお弁当を作るのはどうですかと提案された。
「私、料理を一度も作ったことないです…。」
「初めての料理なら木乃香のために何を作りたい⁇」
「卵焼き。卵料理には自信があって。」
「じゃあ、まずは卵焼きだけをほたる様に任せてもよろしいでしょうか。毎回、一品ずつ増やしていきましょう。」
「ありがとう。紅葉メイド。」
「いえいえ、メイドとして当たり前のことをしたまで。では、作っていきましょうか。」
「まず、レンジでマシュマロを温めてくれますか。その間にボウルに卵を4つ割ってかき混ぜてくれますか。」
「やってみるよ。」
まずはボウルを出して…卵を4つ中に入れる。
かき混ぜるのはこの変な形をしたものでいいのかな?
「手際がいいですね。そうしたら先ほど温めたマシュマロを入れながら牛乳も少しだけ入れてください。感覚的には牛乳の方が早くなくなるように一緒に入れていくイメージでお願いします。」
「味はもしかしたら美味しくないかもしれない。けど、少しでも救ってくれた恩や感謝を伝えるために頑張る。」
「頑張れば、木乃香に気持ちが伝わると思いますよ。」
私は、木乃香のことを思いながら卵焼きを作ったから美味しく完成した。
初めての料理だったが、紅葉の助けもあり最高の弁当ができた。
太陽が昇り、木乃香と一緒に弁当を持って学校に向かった。