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艶のある黒髪はきっちり三つ編みにされ、シルバーフレームのまん丸眼鏡が大きく見えてしまう小さな顔は人形の様に作り物めいてい、ほっそりとした指は今は珍しい紙の媒体に添えられていた。楓の短いスカートとは違うミモレ丈のスカートからは黒のストッキングに包まれたほっそりした足がのぞいていた。
傍目から見るとさながら文学少女と呼ばれる分類の少女に見える。
何故か、目を逸らせず見つめ合っていたら、前からこっんと小さな足に靴を蹴られる。
「さっきから見つめ合ってどうしたの?あの子、確かにお人形さんみたいに綺麗な子だけど見すぎるのは失礼だよ」
小声で楓が囁く。
「そうだな」
と短く返答を返し、まだ視線を感じるが気にしない様にと頭を軽くふり、気持ちを切り替える。
楓がマントの端をツンツンと引っ張り
「ごめん、もしかしてあの子のループタイの留め具が私達と一緒の半透明だから見てたの?」
視線を文学少女(仮)に移し、留め具を見つめる。
新入生の証であるまだ色のついていないループタイを見ると柔らかな胸に視線を移してしまった。
流石にバレたら楓にどやされると視線を逸らす。
「ねぇ、私話しかけに行ってみようかな?ほら今は私と真しかバスに乗ってないしまだバズが着くまでに時間もあるし!!それに、もしかしたら同じクラスになる子かもしれないし」
いそいそと文学少女(仮)に話しかけようと席を移動しようとした楓を止める。
「やめたほうがいい。もしかしたら、俺がお前とバスに走り込んだから見てたのかもしれないだろ?しかも、本を読んでる最中にうるさくする奴がいたら、少し見ちゃったって奴かもしれないし、やめとけ、やめとけ」
楓を諭していると、バスが信号で止まる。
「美未、気にしてないよ?」
おっとりとした口調の癒し声とでも言うのかウィスパーボイスと共に楓の隣に文学少女(仮)がちょこんと座る。
「ごめんねらびっくりさせてしまったかしら?仲が良さそうな子達だったから気になってしまったの。ふたりが美未の話をしてるみたいだからこちらに移動しても大丈夫だと思って来てしまったの、ダメだった?」
音も気配もなくここまで来たことにびっくりだよっと心の中で思いながら、そんな俺を尻目に瞳をキラキラさせた楓は、
「あのね、私 七ノ木 楓。それでね、こっちののっぽのぼんやりしてそうなのが幼馴染の神崎 真」
にぱっとお手本のようなかわいらしく笑顔で楓が文学少女(仮)に自己紹介をしていた。のっぽはまだいいとして、ぼんやりしてそうな奴って
「自己紹介をするのを忘れてました。美未は三尾野 美未といいます。気軽に美未と呼んでください」
ただおっとり文学少女(仮)=三尾野 美未は見た目と中身に差のある独特の雰囲気の美女であった。