始まりの前日
2291年、日本という国は魔法とテクノロジーで満ちていた。
大都市の公共機関は魔法により自動運転が一般的となり、携帯端末はアクセサリーや時計型などの超小型端末が普及し、デバイス型の通常端末はレトロアイテムとしてマニアの間で一定の人気を博していた。
国立魔法学院の創設者であり、魔法を使用できる人類が世界で初めて発見されたのは2121年に4月8日、日本の愛知県で最初の一人と言われる魔法使い神村 夢である。
当時、彼は僅か5歳にして天候を操ったとされる。
彼が泣けば雨が降り、彼が怒れば雷が落ちたとの検証データも残っている程に幼い彼は精神コントロールする為に様々な訓練を受けたと後々インタビューで語っていた。
また彼が発見された翌年から魔法使いの出生報告が日本国内で上がるようになった。
ここ170年間の間で日本の人口の50.1%は魔法使いと他国の倍以上の出生率を誇り今は世界最大の魔法先進国にまで上り詰めた。
人がひしめき合う時間のビル街の大型の立体スクリーンに流れる報道に思わず歩みを止め上を見上げる。
神村 夢の特集番組からは彼が亡くなってから見つかった日記の一ページの部分をスーツ姿の妙齢のアナウンサーの女性が読んでゆく。
『神村 夢の遺産 人になり得る全能也 アリス
一つ この世の偶然の産物であり、神秘である。
二つ 美と力とは最大の凶器である、狂うなかれ。
三つ アリスは魔法の源であり、根源である。
四つ 運命とは、必然で有り、分岐点と言う事を。
五つ 選ばれたなら喜びなさい、そして嘆きなさい。
六つ 彼らは ※ ※ ※ である。
七つ そして ※ ※ ※ ※ ※ いけない。
追記 忘れてはいけないアリスとは人で有りドールであることを』
彼が映し出される、100年以上前の偉人 神村 夢は写真でもわかるように白衣を着たアーモンド型の瞳に肩口までのミルクティー色の髪の優しげな雰囲気の細身の麗人である。
『尚現在、発見されたアリスは一体、神村氏が設立した魔法学園で保管されてるとのことですが、それ以外の情報は外部の機関には一切出回っていません。』
アリスは一般人にとって見ればUMに近い話である。
遥か昔に流行ったと言われるツチノコ探しの様に面白半分に神村 夢の軌跡を辿るアリス探しなツアーは今でも大変人気である。
コメンテーターのお方々が口々に各々の意見をBGMに歩みを始めた。