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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章06~ウェストサム・ロードエリア~
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02_06_01

【登録搭乗マシン】

●エステートスクール

・ティナ・ブリンクル      ;オセロットシルバー

・エンディ・ストランド     ;オセロットイエロー ←2位

・カイン・ホプキンス      :オセロットパール (リタイヤ)

・マガネ・アルバレス・アラキダ ;オセロットグリーン 


●ユニバース学園

・ビフ・ハワード・マーティン  ;ウルフブラック  ←TOP

・ベル・エルドリッチ      ;ウルフブラウン 

・クラン・グランニュー     ;ウルフブルー   ←3位

・カルラ・ポートレイン     ;ウルフピンク 

 ウェストサム・ロードエリア。針葉樹林帯が続く山間を抜けるルートは、曲がりくねったカーブが続く舗装された道路だ。


 エンディは、クリアの通知を受けた瞬間から、ウエストサムに向かって、オセロットイエローをバイクモードにしたままひた走っていた。

 バックモニタでウルフブルーの機影を確認するエンディ。

 山間の稜線をうねって伸びる、コーナーの多いルートを果敢に攻めるエンディ。モニター上で、前方を走るウルフブラックの光点が徐々に近づいてくるのが分かる。


 今は、2位でゴールラインを抜けることが出来るポジションに自分がいる。


 はやる気持ちと焦る気持ちがないまぜになる中、必死で自分を鼓舞する。エンディの焦り、それははるか後方から迫ってくるユニバースマシンだ。


モニター上のマップ位置に目を走らせるエンディ。後ろにぴったりついてくるウルフブルーのさらに後方。ウルフブラウンの光点がぐんぐん加速して、自分たちとの距離を詰めてきている。練習でも体験する以上の走りを見せているつもりのエンディにとって、ユニバースのマシンたちが、まるでゆっくりと、このオセロットイエローを捕食するかのように挟撃できるポジション取りを進めてきていることに恐怖すら感じていた。


自分がウルフブラックに追いつくころに、他のユニバースのマシンに周りを取り囲まれることになる。とはいえ、今は引くこともできない。

 そんな時、さらに追い打ちをかけるかのように、ウルフピンクの光点の予想ルートが自分に向かって伸びてきた。

 ウルフブラウン、ベルのスピードよりさらに速い!ピンクの光点の移動速度を見て焦るエンディ。


 やばいやばいやばい!


 ティナとマガネは、どうなったの?カイザーファウンテンで足止めになってるの?

 と思った時、オセロットシルバーと、オセロットグリーンがエリアクリア線を越えたことが通知された。ほっとする反面、先行して走る自分たちとのラップ差に絶望感を抱くエンディ。


 何でもいいから!はやく追いついて!


 エンディは、祈るようにつぶやいて、スロットルを全開にすると、さらにマシンを加速させていった。


 その後ろをウルフブルー、クランが追っていく。


 オセロットイエローの後ろ姿を見つめながら、その差を開けないよう、慎重にウルフブルーを操るクラン。モニター上では、後方を走るおウルフブラウンとピンクがぐんぐん追い上げてきている。オセロットイエローは、クランが考えていた以上のペースでルートを攻めているが、ウルフィAIが示す予想では、ウエストサム・クリークエリアのルート中腹越えたあたりで、オセロットイエローを、ユニバースの狼の群れが捕らえることになると告げていた。

 クランは目の前のコースに集中しながら、モニターに目を走らせた。オセロットシルバーとグリーンの機影はまだ見えない。


 このラップ差は簡単に埋められない。


 クランはじっとオセロットイエローの背中を見つめながら。その時、ウエストサム・クリークエリアのマップ上で、オセロットシルバーとグリーンの光点が画面の端に見えた。エリア後方に位置すると思われてた二機のマシンは、カイザーファウンテンエリアを抜けている。しかし、ウエストサム・クリークエリアを結ぶ、自分たちが走っているルート上にはいない。


 間欠泉に足止めを食らって、大きく迂回ルートを進んでいるのか?


 妙な胸騒ぎを覚えるクラン。


「ウルフィ!オセロットシルバーとグリーンの予測ルート」


ウルフマシンAIから「表示します」の返答。二機の光点からぐーんと予測ルートが伸びていく矢印は、自分たちが走る舗装されたスピードエリア上に戻ることなく針葉樹林エリアをまっすぐ越えて、曲がりくねったクランクの先で落ち合う形でウエストサムに交わっていった。


 不整地でのショートカットを選択した?


 クランは、二機のマシンが、自分たちに追いつくであろう予測時間を見て愕然とした。


 巨大針葉樹林帯の不整地ゆえにロードコースよりも正確には読み辛いはずだ。しかし…


 クランは、予想ルートを警戒メッセージを添えて、僚機にデータリンクして送ると、オセロットイエローとの距離をやや縮めにかかっていった。


「うおおおー」


オセロットシルバーの移動ルートを追うようにグリーンを走らせるマガネ。しかし、ティナのオセロットシルバーのペースは速く、引き離されないのが精いっぱいだ。


 「はええ!なんて空中軌道だよ!」


 ティナのライドテクニックに圧倒されながらも、マガネは意識を集中して、へまをしないように必死にグリーンを操舵していった。

 オセロットシルバー、次いで、グリーンが巨大なワイヤーを伸ばして、まばらに続く木々の間を振り子のように抜けていくと、高い丘陵地帯にさしかかった。モニター上では大きく曲がりくねる舗装路と並行して進むウルフブラウンとピンクの光点が見えた。崖の先の森の向こうに、ウルフマシンとオセロットイエローが走っているであろうロードコースがちらちらと見え隠れする。


 ひときわ高くそびえたつ巨大なロッジボールマツにとりつき、100メートルはあろうかという半径の振り子で、一気に前方へ飛び出して、次の枝へと移っていく。標高の高い空中軌道を進むと、空気の層が薄く感じ、目もくらむような浮遊感を感じた。やがて樹林帯が開けると、草地に覆われたなだらか傾斜が前に開けた。オセロットシルバーも前方で、ワイヤーを回収して下降線に映っていた。マガネも後に続き、降下軌道に移る。


 モニター上では、自分たちと並行して進むコースエリアで、ウルフブラウンとピンクがやや先行して走っているのが分かる。


 なるほど、追いつけない速度じゃないかも。


 オセロットシルバー、ティナとグリーン、マガネの機体が草地の斜面に着地して滑っていく、傾斜を加速し進んで行くと、その先に崖地が迫ってきた。


「うおおおお!まじか!」


 と叫ぶマガネをしり目に、加速したオセロットが崖から飛び出していく。


「い!」


 驚くマガネの前で、オセロットシルバーが、アンカーを撃ちだし、崖地の下で生息するひときわ大きなロッジポールパインにワイヤーを這わせで、大きく空中旋回をすると、さらに前方へと飛び出していく。


「ああーくそう!どうにでもなれー!」


 ティナが見せた軌道をまねるように、半ばやけになって崖から飛び出すマガネが、ワイヤーに撃ちだした。


 コーナーを攻めるウルフブラウン、ベルがモニター上で追い上げるオセロットシルバーとグリーンの光点を確認した。


 予想速度が上がっている?こっちも速度を落としているわけではないのに…。


 モニター上で伸びるオセロットたちの予測軌道は、この先ルートの先の大きなS字カーブルートにまっすぐ伸びていく。


 ショーション・レイク・オーバールックか…


 ウェストサム・ロードエリアがループロードに繋がるぎりぎりの範囲で、ルートが交わる先なら、その場所が最適のように見える。ウエストサム湖を山の向こうに一望することが出来る人気のトレッキングエリアから、一気に山の斜面を下って、上からロードになだれ込む。

 ウルフブラウン、ベルは、ちらと、バックモニタで後方を確認する。ウルフピンクの機影がちらちらと見え始めていた。


 さすがね、カルラ。


 感心すると同時に、マシンスピードを上げると、ベルは前方の向きなおってマシンのスピードを上げて行った。


 ティナとマガネが針葉樹林帯を抜けていくと、さらに大きな山の稜線が高く続き、巨大な針葉樹の群れがマガネ達を阻むように続く。しかし、前方のティナは、迷いもなく、次々ルートを制覇していった。マガネが必死でその空中軌道に追っていくと、丘陵の高い山頂を越えて、針葉樹林帯が一望できるエリアに抜けた。一段下がった山の斜面に続く森の向こうに、大きな湖の水面がキラキラと陽光を照り返して輝いた。


ウエストサムの湖面だ。


 空中に舞い上がったマガネが、その深い青と白いきらめきに、思わず目を奪われそうになる。高い斜面から飛び移り、慌てて体制を立て直すマガネ。完全にペースメーカーとなっているティナは、アンカーをつないでいくと、その前方でさらに上昇して、ショーション・レイク・オーバールックのトレッキングルートを越えて、さらに前へ飛び上がっていった。


 追いかけるマガネの眼下に曲がりくねった道路が見えた。


 モニター上で、ウルフピンクと、ブラウンの光点が、その先のクランクを曲がって加速して行くのを確認した。


 もうすぐ肉眼で捉えられる距離だ!


 マガネが興奮して、機体のバランスを整え次のワイヤーを射出すると。ティナがマガネに向かって叫んだ。


「マガネ!斜面を一気に抜けて、舗装路に合流するよ!」


 空中を飛翔するようにティナが舞う。心なしか、その声は、楽しそうに高揚しているように聞こえた。

 こっちはついていくのに必死だってのに!なんてやつ!と心の中で思いつつのマガネだったが、


「お!おう!」


 と答えるので精いっぱいだった。



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