03
部活用の装備をリュックサックに詰め込んで背負い、外出靴に履き直すと、玄関に向かうマガネ。
シューズボックスに入っているフィールド用スパイクをバックに入れようとすると、パタパタと後ろから足早にユウミが走ってきた。
「マガネ!」
「?」
「はい、これ」
いたずらっぽく笑ったユウミは、マガネの目の前に新品のスパイクを差し出した。
一瞬戸惑い、改めて驚きの声を上げるマガネ。
「すげえ!これニューモデルじゃん!……あー……でも、まだいいよ。まだ、ギリ、こいつも履けるし……」
手に持っていたスパイクを指さすマガネ。使い込まれ、擦り切れてボロボロになったスパイクのつま先がベロンと垂れ下がる。思わずマガネは苦笑いを浮かべた。
「だめよ。足、また大きくなったんでしょ?怪我してからじゃ遅いわ」
マガネスパイクを取り上げ、新品のスパイクをマガネに渡すと、
「きっちりレギュラー、獲ってきなさい!」
いたずらっぽくユウミは笑って、ぐっとサムズアップをした。
「……ありがとう。ママ」
ちょっと困ったような笑顔を浮かべてスパイクを受け取り、バッグを肩にかけるマガネ。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ユウミがマガネの頬にキスをする。
マガネもキスを返すと、玄関の先から、マガネを呼ぶようにクラクションの音が聞こえてきた。
せかされるように出ていくマガネは、見送るユウミに手を振り、玄関から駆け出して行った。